“てんかん学ハンドブック 第4版(医学書院)”の感想
書籍名
てんかん学ハンドブック 第4版(医学書院)
レビューした人
医師5年目、脳卒中内科医
総合評価
★★★★★★★★★☆
読み返し度
★★★★★
この参考書を読むタイミング
後期研修の働きたて
この参考書を一文で表すなら
てんかん診療のお供
読者の感想
医師3年目の中盤ころ、購入を迷っていたら第4版が発売されたためすぐに購入しました。そこから1年半後の最近になってようやく通読しました。見開きA4サイズで400ページです!自分は小児科医ではないため、小児分野のてんかん症候群はほとんど読み飛ばしています。
本書の構成として①てんかんの基礎・総論、②大まかな治療方針、③特徴的な脳波所見、④てんかん様の症状を見た時の、症状から類推する非てんかん性疾患も含めた鑑別診断、⑤てんかん症候群とてんかん類似疾患の各論、⑥抗てんかん薬、⑦遺伝性疾患、⑧てんかんを生じる器質的疾患、⑨妊娠、自動車運転、社会制度などの診療アラカルト の全9章からなります。分厚いもののハンドブックというだけあって、個人的には①②⑥がすごくまとまっていて、よくできているなあと気に入っています。④も症状から疾患を逆引きできてとても便利だと思います。
前書きより、筆者の思惑としてまずは①を理解しただけでてんかん診療のほぼ8割はとりあえず大丈夫と考えてよい、とあります。また、すぐに実践に役立てるのであれば①~③を集中して読み、実際の症例に当たった時に④⑤などで勉強することをオススメしています。個人的にもその勉強方法が正しいと思います。ただ、この①を理解するのがなかなか難しい。というのは、てんかん発作・類型の分類が2017年に改訂されており、そこの解説から始まるのですが、そもそも、もとの分類の理解もちゃんと理解できていないし、それぞれの発作の具体的な症状もわかっていないこともあり、初学者にとってこれがもうチンプンカンプンなのです。その他書籍で確認しようにも2017年改訂に対応していないことが多く頭を悩ませます。ただ、他の方法でいろいろと調べて分類を理解し、その後読み返してみると「よくまとまっているなあ」としみじみと感じました。
脳波に関しては最低限の記載に留めてあり、他書で学ぶ必要があります。まあ、ハンドブックですから。
本書の読者層としては、自分でてんかんを診なくてはならなず、「とりあえずイーケプラ!」をやったことがあるような神経系医、小児科医、精神科医の後期研修医以降でしょう。専門科であっても全くの初学者では初めの1冊とするには厳しく、辞書的な使い方の方がいいかもしれません。繰り返しになりますがハンドブックですから(笑)。まずは「寝転んで読めるてんかん診療(メディカ出版)」などでハードルを下げた方がいいかもです。
初期研修医であればまずは救急外来系の参考書で発作を止める方法を学び、実際の発作の症状を知り、問診力を高めることが先決だと思います。これは以前「救急外来ただいま診断中」、「初めてのけいれん さあどうするか」、「知っておきたいてんかんの発作」をレビューしていますのでご参照ください。救急医であれば重積管理まで必要となるでしょう。
自分自身まだまだてんかんの理解が不十分ななかでのレビューとなり申し訳ありませんが、今後も学び続けるためのお供になることは間違いなさそうです。オススメの1冊です。
“この失神、どう診るか”の感想
書籍名
この失神、どう診るか
レビューした人
医師5年目、脳卒中内科医
総合評価
★★★★★★★★★☆
読み返し度
★★★★☆
この参考書を読むタイミング
研修医2年目, 後期研修の働きたて, 後期研修中やそれ以降
この参考書を一文で表すなら
失神診療のリアルを楽しむ
読者の感想
以前読んだ「失神外来を始めよう!(文光堂)」に続いて、失神の知識を深めようと思い読みました。感想としては、滅茶苦茶面白かったです!正直、、、失神ナメてました(専門家の先生すみません)。
救急外来系の参考書の1章くらいでは語ることが出来ない内容がこの本には詰まっています。実際の20症例をベースに反射性失神、心原性失神、てんかんを主に解説しており、合間のコラムで重要な知識・トピックスが紹介・整理されています。普段お目にかかれない、というよりは見逃しているだけかもしれないような重要な症例がたくさん紹介されており勉強になりました。
非循環器医の自分としては、植え込み型ループ式心電計やtilt試験ってこんなに閾値低くやってんだなあという感想を持ちました。また、自分はてんかんを診ることも多いのですが、側頭葉てんかんでは心抑制型血管迷走神経性失神に極めて類似した脈拍変動がみられることがあるなんて恥ずかしながら初めて知りました。そんな風に、てんかんと失神の鑑別に対してもしっかり解説がなされています。
以前レビューした「失神外来を始めよう!(文光堂)」は何となく物足りなさがあったのですが、本書は症例ベースなおかげで失神診療のリアルを味わえました。
一方、問診事項や診察方法などに関する記載は乏しいため、そちらは「失神外来を始めよう!(文光堂)」で補うといいと思いました。お互い足りないものを補っているような印象で、2冊とも読んでよかったです。
先に読むなら1冊目は「失神外来を始めよう!(文光堂)」がいいかと思います。注意点として、やっぱり心電図の本ではなく「診療読本」なため、ハイリスク心電図の波形の解説などはありません。機会があれば、「心電図ハンター② 失神・動悸/不整脈編」もレビューしたいです。
失神を診る機会のある医師、特に循環器内科や神経内科を志望する方にとてもおススメです。研修医の先生や医学生であれば、まずは救急外来系の参考書から手を付けた方がいいでしょう。
“リハに役立つ脳画像”の感想
書籍名
リハに役立つ脳画像
総合評価
★★★★★★★★★☆
読み返し度
★★★★★
参考書のレベル
標準編
使用した場面、役立ったエピソード
どのように:頭部MRIでの大まかな機能解剖をつかめる
読者の感想
(2020年2月 記)
脳卒中を専門とするようになった3年目の最初のほうに購入し読みました。頭部MRIをよく見る科を回るけど、大まかな機能解剖を勉強したい、けど何から始めたらいいのかわからないという方にオススメです。
本書はリハビリスタッフ向けに書かれたものですが、脳を専門とする医師の自分にも役立ちました。本書に書かれている内容を全ておさえておくことができればかなりのものだとも思います(自分も未だマスターできていません)。
また、頭部MRIの原理だとか、なぜその画像変化をきたすのかなどの難しいことも記載されていません。単純に「脳構造の同定の仕方」、「その部位の機能」、「脳卒中で生じる症状」をざっくりとつかむことができます。説明もわかりやすく、1つ1つなるほどと感じながら覚えることができます。
「Broca野ってなんとなく前頭葉のこの辺にあるのはわかるんだけど、、、」とあいまいになっているのであれば、本書での勉強をおススメします。診察の本などを読んで、「実際それMRIでどこにあるの?」とリンクさせながら勉強するのもいいかもしれません。
神経診療において症候ー診察ー機能解剖は切っても切れない関係のため、勉強しにくいですし、時間もかかり、結局断念してしまった方も多いのではないでしょうか?小難しい分厚い書籍よりも、まずは本書のような気軽なものがいいと考えます。
“神経内科ケーススタディー 病変部位決定の仕方”の感想
書籍名
神経内科ケーススタディー 病変部位決定の仕方
総合評価
★★★★★★★★★☆
読み返し度
★★★☆☆
参考書のレベル
入門編
使用した場面、役立ったエピソード
なぜ:神経内科診断における考え方の基礎が学べる
読者の感想
(2020年2月 記)
自分は内科の立場で脳卒中を専門としていますが、神経内科医ではありません。しかし、よく脳卒中以外の神経疾患も紛れ込んで紹介を頂きます。
新患外来をするようになった医師4年目の始めに購入し読みました。脳卒中ばかり診てきたけれど、そもそも自分は神経内科診断の基礎が分かっているのか確認したかったからです。脳卒中の場合、局在診断が曖昧な若手でも頭部MRIを撮像すれば結果オーライになることも多いですから。
読んでみて、これ勉強せずに神経領域にいたらこの先恥ずかしい目にあってただろうなと感じました。それくらい自分は神経診断の基礎がわかっていませんでした。一つ一つの診察方法のやり方は学んで何となくできていたけれど、まず全体像をつかむのに本書は最良だと思います。よって、神経内科のローテートが決まった初期研修医の1冊目に読むべき参考書として本書をオススメします。
古い本ですが、全体として100ページくらいの分量で、非常に読みやすい。数日で読めます。まず本書の第1章で、全ての神経疾患を発症様式(症状の完成に至るまでの速度)で鑑別することを学びます。わかっているようで、これ本当に重要なポイントです。これが分かっているだけで問診力や緊急性の判断、コンサルトの質が変わると思います。それに続いて、反射、末梢神経、長経路、脳神経などと病変部位決定の仕方を学びます。
本書では診断の考え方が非常によくまとまっていますが、具体的な診察方法や詳細な解剖学、各疾患の各論については明記していません。そのため、それらは他書で勉強しておく必要があります。それでも、本書読んだ後にそれらを勉強するとスムーズに頭に入ってきます。
次の参考書へのステップアップのための本ということで、読み返し度は3としました。神経内科の1冊目に是非どうぞ!医学生にもオススメします!