「医学書って何を学べる?」「医学書を書いた人の思いって?」
医学書の裏側、知らない方がも多いのではないでしょうか?
そんなあなたに医学書の裏側の面白さ をお伝えする連載を作ってみました!
その名も「医学書インタビュー」!
そのままですが、医学書を執筆された先生方に「医学書に込めた思い」を本気でインタビューする企画です。
医学部5年のサイト運営クロがインタビューさせていただきました!
- どんな人に読んで欲しい?
- 内容・構成でこだわったところは?
- どうしても伝えたいメッセージって?
第一回にご登場いただくのは、ラッコの妊娠相談室でも有名な産婦人科医の柴田綾子先生(@ayako700)
今回取材させていただいたのは「患者さんの悩みにズバリ回答!女性診療エッセンス100」です!
この記事では、書籍の内容についてのインタビューをお伝えしていきます!
実は「執筆の裏側」や「柴田先生が産婦人科を目指したきっかけ」もお聞きしています。
3部構成のインタビューになっているので、第2部、第3部もぜひご覧ください!
第2部.本ってどう書くの?執筆の裏側を聞いてきたよ!【柴田綾子先生】
第3部.柴田綾子先生が産婦人科を目指した「きっかけ」【キャリアインタビュー】

柴田先生、よろしくお願いします!
ズバリ、どういう方に読んでもらいたい本ですか?
この本の読者としては2つのパターンを想定していました。
- 産婦人科の専攻医・産婦人科以外の先生
- 一般女性や女性の健康に関心のある方
1.産婦人科の専攻医・産婦人科以外の先生
まず、私が感じている課題として、現在の産婦人科領域の本が難しいというのがありました。
専攻医の先生向けの本は非専門医や一般の人には難しい…
いっぽうで研修医向けの本では内容がいつも決まっているように感じます。
この真ん中のレベルの本を作りたいという思いがありました。
実は、医学書でも「多くの人に買ってもらえるテーマを考える」というのは重要です。救急や抗菌薬は、多くの医師が関係するものであり、需要がたくさんありますが、「産婦人科」では関心のある方が限られてしまう可能性があります。
どうやって、この本を読んでくれる人を広げるのかと考えた時に、
産婦人科以外の先生が「外来でついでに質問されること」にお答え・解説できる本を作ろうと思いました。
2.一般女性・女性の健康に関心のある方
インターネット上で女性についての健康情報って多いんですが、同時にデマも多いんですよね。
特に生理・育児のこととかは要注意です。
例えば、生理だったら「子宮を冷やしたらダメ」「子宮を温めたら妊娠しやすくなる?」というような記事があります。
このような情報は、エビデンスや根拠に乏しいのですが、女性向けの記事や雑誌では、イメージでこのように書かれていることがあるのです。
この本は、正しい情報を知りたい一般の方向けにもできないかなって思いながら作っていました。

たしかに、デマ情報って多いですよね…
最近だと「コロナワクチンを打つと不妊になる」という根拠のない情報が拡散される問題がありますね。
将来妊娠できなくなる可能性は女性にとって深刻な問題なんですよ。
今ワクチンを打って感染症を予防できたとしても、将来不妊症になってしまったら…
と思うと、女性としての機能を考えて、ワクチンの接種を躊躇してしまう人がいます。
デマを作る人ってそういうところに突っ込んでくるんですよね。
妊娠・不妊はデリケートだけど皆が知りたいこと。
でも、エビデンスが伴わない情報もたくさんある。
そのような中で「こういうことはエビデンスがある、こういう説明がデータに基づいているよ」ということを紹介できたら思いました。
本の内容でこだわったところを教えて下さい!
執筆の依頼は出版社から頂いたあと、こういう本をつくりたいという方向性は執筆者側から考えていきました。
今回の本では不妊症の領域をしっかり内容に入れました。
私自身でも不妊治療を臨床現場では診療しておらず、これまで本でもあまり書いていませんでしたが、女性からの質問には不妊症についての質問は圧倒的に多いです。
私自身も、不妊症についてエビデンスに基づいた情報発信が少ないと感じていました。
クリニックのHPの情報とか、ブログとかで不妊治療の論文紹介や、治療を受けている患者さんの発信は多いのですが、不妊治療についてのQ&Aは少ないと感じていました。
最近やっと学会がガイドライン(*)を作ったくらいなんです。
*注:生殖医療ガイドライン原案と方針の公開について(日本生殖医学会)
女性の悩みや質問を取り上げる本書では、不妊治療は必要だと思い、監修の菊池先生にお願いしました。
本の構成面でこだわったところはありますか?
今回の本はできるだけ見開き2ページでまとめるようにしました。
忙しい外来でも「ちょっと待っててね」という感じでパッと調べられるのをイメージしました。
患者さんからの質問から目次で検索をすると「こうやって回答できます」という回答例が提示されていて、真ん中に細かな解説をつくるようなイメージでしたね
この本は、女性が来る内科外来や、診療所の先生方に使っていただけるととても嬉しいです。
あとは、インターネットやSNS情報を得ている一般女性の方にも、ぜひ手にとっていただきたいです。
そんなに難しくならないように工夫したので、ちょっと詳しく勉強してみたいなと思った時に手を伸ばしてもらえると嬉しいです。
特に力を入れた分野、章などはありますか?
今回、(共著者の)重見先生が思春期のところに、特に力を入れてくれたと思います。
「月経痛」や「初めての性行為で痛みが出た」「おりものの異常」
などの悩みに対してどう対処したら対処したら良いのかって、初めてだと分からないと思うんです。
日本ではまだまだ思春期に届くような情報が少ないと思います。
思春期の娘さんを持つ親御さんや、性教育の活動をされている方には、ぜひ思春期のところを見てもらえたら嬉しいです。
最後に、読者の方にメッセージをお願いします!
意外と、産婦人科って勉強しておくと役に立つんですよ。

産婦人科医への熱い思いを語ってくださった柴田先生
みなさんの中には、将来結婚したり、ご自分やパートナーや友人が妊娠・出産すると思います。
そんなときに産婦人科の知識を知っておくと、プライベートで役に立つことも多いです。
国試以降は産婦人科に触れていない方でも、嫌いにならないで勉強して頂けると嬉しいです。
将来絶対プライベートで役に立つと思います。
自分のためにも、自分の家族のためにも。
あとは意外と友達から「医者」っていうだけで健康について質問されることもあるんです。
専門外でも、勉強しておけば役に立つことも多いですよ!
この本にもっと付け足したかったところ、工夫したかったところはありますか?
時間の関係・スペースの関係で書けなかったところもありました。
次の版を出すときは図表を入れて分かりやすくしたり、情報をさらに整理しながら書けたら、もっと本を開いてくれる人が増えてくれるのではと思っています。
今回の本には載っていなかった「双子って特別な管理とかいるんですか?」と質問してみました!
双子の場合、膜性診断(胎盤の数や羊膜腔の数)によって医学的なリスクが変わってくるんですよ。二絨毛膜か一絨毛膜かによって注意しなければいけないことも変わります。
双子の方は、膜性に関わらず流産早産、高血圧のリスクが上がるので、かなり慎重にみていく必要があります。
ただ、お産だけじゃなくて、双子や三つ子の方などの多胎妊娠の方は育児もかなり大変なんですよね。
今ってお母さん1人で育児をされているとこもあるんですけど(いわゆるワンオペ)…
多胎妊娠(双子や三つ子の方)は、お母さん1人で育児できるレベルじゃない。
「双子だ!わーい」みたいな旦那さんとかもいらっしゃるんですが、双子・三つ子はかなり大変です。
男親もガチで育児してもらわないとたまんないです。
双子や三つ子に関しては、本当は妊娠中のリスクだけじゃなくて、育分娩後の児のことも情報提供する必要があると思います。
多胎の家庭をサポートをしている自治体やNPOもあったりするんですが、情報が知られていないこともあります。
医師として知っておきたい教養を学べる一冊
「女性の健康」は知っておけば役に立つ情報ですよ
そんなメッセージを伝えてくださった柴田先生。
「患者さんの悩みにズバリ回答!女性診療エッセンス100」は
産婦人科の知識をわかりやすく学べるだけでなく、医師・1人の人間としての教養も身につけられる一冊。
女性が読んで勉強するだけでなく、男性として読んでもおすすめの医学書でした!
柴田綾子先生ツイッター:@ayako700
産婦人科を目指す方向けのHPもぜひチェック!

出典:産婦人科への扉
公式HP:日本産婦人科学会
以下の記事もおすすめ!
今回の柴田先生へのインタビューは3部構成で行っております。
(当記事)第1部.「女性の健康をもっと知って欲しい」柴田先生が本当に伝えたい思い【医学書インタビュー】
第2部.医学書ってどう書くの?執筆の裏側を聞いてきたよ!【柴田綾子先生】
第3部.柴田綾子先生が産婦人科を目指した「きっかけ」【キャリアインタビュー】
また、以下の2つの記事も当サイトで公開しています。
- 柴田先生が執筆された医学書のまとめ記事
- 産婦人科ローテ前に読んでおきたい記事
ぜひ合わせてご覧ください!