「初期研修終わったらどうしよう?」「医師としてのキャリアってどうする?」
将来の進路でいろいろ悩んでいることもあるのでは?
そんなあなたに、先輩医師にキャリアについてお聞きする企画を用意しました!
その名も、【〇〇先生の「きっかけ」】
文字通り、先輩医師の今までの経歴・キャリアのターニングポイントを伺う連載です。
医学部5年のサイト運営クロがインタビューさせていただきました!
- キャリアで迷ったときはどうする?
- 進路を決める時に考えるべきことは?
- 医学生のうちにやっておいた方がいいことって?
第一回にご登場いただくのは、ラッコの妊娠相談室でも有名な産婦人科医の柴田綾子先生(@ayako700)
産婦人科医として活躍なさっている柴田先生ですが、実は名古屋大学の情報文化学部を卒業後に医学部に再受験したご経歴をお持ちです。
学生時代に15カ国以上の国にバックパッカーとして旅した経験から医師を目指すようになったそう。
そんな柴田先生に産婦人科を目指したきっかけを聞いてきました!
今回のインタビュー連載は3部構成です!
第3部の本記事と合わせて、第1部、第2部もぜひご覧ください!
第1部.「女性の健康をもっと知って欲しい」柴田先生が本当に伝えたい思い【医学書インタビュー】
第2部.本ってどう書くの?執筆の裏側を聞いてきたよ!【柴田綾子先生】
お母さんと子供が社会の最下辺にあった現実
柴田先生は再受験で医学部に入った時、どういう気持ちの切り替わりがあったのでしょうか?
最初は医学部受験に失敗したんですよ。

高校卒業時に医学部に応募したんですけど、学力が足りなくて普通に落ちてしまったんです。
それで情報学部に入ったんですけど、一般の学部で時間があったので、バックパッカー(リュック1つで旅行するスタイル)で世界遺産を回っていました。
そこで見た現実が衝撃的で…
物乞いの子供やストリートチルドレン。
お母さんと子供が社会の最下辺にあって、もちろん病院にもいけない現状があったんです。
自分も1人の女性だし、女性を支援できるようになりたいと思って、もう一回医学部にチャレンジしようと再受験しました。
医学部に入ってから最初は家庭医になりたいと思っていました。
大人から子どもまで幅広く診れるスキルをつけられるのがよいと思いました。
医学生のときに家庭医の先生に話を聞いたり、病院見学に行ったりしたんですが、お産ができないっていうのがどうしてもひっかかって…
自分は「お産をとりあつかえるようになりたい」という思いがあったんです。
アメリカとかのプライマリ・ケア医ではお産も対応しているところがあるのですが、日本だとお産を学べる家庭医療の研修プログラムは少なかったんです。
自分はお産ができる医療者になりたいという点から産婦人科を選びました。
高校生の時と新たに医学部に入学した時とで、医学部に対するイメージは変わりましたか?
高校生のときは漠然と手に職をつけて、手堅い職につきたいと思って医学部を想像していただけでした。
再度入学したときは女性を支援するスキルを身につけたいという思いが強かったですね。
バックパッカーとして貧しい母子を見たときの印象は衝撃的でした?
「生きるため」という状況に追い込まれると、子供までここまで物乞いをしないといけないんだって衝撃でした。
本当だったら子供って遊んでなんぼだと思うんです。
日本だったらきれいな服を着て公園で遊んでいるような年齢の子たちが、ひたすらお金ちょうだい、ご飯ちょうだいって観光客に物乞いしているのを目の当たりにしました。
子供は全然悪くないのに、こんな風に育ってしまうのだ。
そんなことにさせている社会があるんだって思いました。
こういう問題の根源には避妊や家族計画が十分にできておらず、子供がたくさん生まれて、育てられずに貧困になってしまうみたいな流れがベースにあると思うんです。
自分はこういう世界があることを知らなかったんだというのが衝撃的でしたね。
1番印象に残った国や都市はありますか?
カンボジアとかインドですね
カンボジアって実は世界から発展途上国支援がたくさん入っている国なんですけど、現地の人が支援慣れしてしまって「支援されるのが当然」みたいになっている問題があります。
子どもたちは現地のお金より、外国のドルの価値がすごい高いことが分かっているんです。カンボジアのお金よりも旅行者から1ドルもらったほうが価値があるんですよ。
子どもたちが観光客の周りに集まって「1ドルくれ1ドルくれ」と手を突き出してせがんでいる姿は、衝撃的でした。
インドは人口が増えすぎて絶対的な貧困になっています。
家とも形容できないようなところに何人も住んでたりとか、家がなくて道端で住んでいるのが当たり前になっている。
人工が増えすぎて社会でカバーしきれない。そういう世界になっている
自分が日本で住んでいる日本とは全然違う感じで衝撃的でした
発展途上国の状況は、自分一人の力でどうにかなるとかそういうレベルを超えてしまっていましたね。
ずばり、医学生にバックパッカーはおすすめですか?
本当はそう思います。コロナがなかったら、是非いろいろ旅行して見てもらいたいです。
今はコロナで難しいかもしれませんけど…
でも、旅行以外にも学べることもあるはず。
実は日本の中でも焦点が当たってないだけで、貧困ってあるんですよね。
どうしても発展途上国に目が向きがちなんですけど、
日本でも「ヤングケアラー」といって親などの介護や世話のために学校に行けずに介護しないといけない子もいるし、
あとは生まれてすぐ親から捨てられてしまい、児童養護施設で育つ子もたくさんいます。
日本は裕福で、そういう影の部分が見えにくくなっているんですが、自分が意識して見ようと思えば日本の中でも貧困や影の部分は沢山あると思います。

あとは、インターンとかも大事だと思うんですよね
今だったら起業されている先生も多いし、ベンチャーとかで医学的な知識を持って世界に活躍している人もいます。
いろいろな分野に挑戦している若い世代には頼もしく感じますね
家庭医から産婦人科医に考えを変えたということですが、キャリアの選択についてメッセージがあれば教えて下さい!
キャリアを「今の時点での損得」で選ぶとコロナみたいな新しい事情で一気に崩れてしまうことがあります。
まずは自分がやりたいことをベースに置いてもらったほうがいいと思うんですよね。
「これをやりたいけどあんまり儲からなさそうだからやめとく」とか、
「女性医師だから外科系は難しいじゃないか」
とかをそいうの相談ことがあるんですが、今の状況はこれから意外と変えていけるというか、10年あれば変わっていくことも多いです。
長くやっていけばつらいこともあるんですけど、自分がやりたいことならやっぱり続けられる。
キャリアチェンジもできる時代です。
損得で選ぶのではなく自分のやりたいことをメインで選んでもらうのが良いかなと思います。
最近はいわゆる「ハイポ系」とかありますが、そういう状況も一気に変わりうるってことですよね。
ハイポという生き方が自分に合っていれば、全く問題ないと思います。
ただ「何をやりたいのか分からないから」とか「とりあえず楽したいから」
みたいな消極的な選択だと最終的に目的を失って、せっかく知識やスキルがあるのにもったいないこともあります。
まずは自分のやりたいことから決めるのがいいかなと思います。
医学生に戻れたらやりたいことはなんですか?
医学とは全く関係ない所でインターンとかしたかったです。

やっぱり医療の中だけで過ごしていると、社会の一部分しか見えていないと感じます。
本当なら、社会人として学んでおかないといけないことも沢山あったなと思います。
大学を卒業して、そのまま病院で研修開始だったりすると、マナーとか社会人として求められることがあるんですけど、勉強できてなかったなと感じることがあります。
学生のうちは多少無礼があっても許されるところがあるので、あえて医学の外で勉強できたらよかったなと思います!
産婦人科医を目指す人が増えてくれると嬉しい
産婦人科医を目指すようになった原体験を語ってくださった柴田先生。
「自分のやりたいことをやる」のがいいというアドバイス、
さらには「やりたいこと」は医学以外の経験から見つけられるというメッセージをいただけた気がします。
この記事を読んで、1人でも多くの方が産婦人科医を目指してくれると嬉しいとおっしゃっていました。
柴田綾子先生ツイッター:@ayako700
産婦人科を目指す方向けのHPもぜひチェック!

出典:産婦人科への扉
公式HP:日本産婦人科学会
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今回の柴田先生へのインタビューは3部構成で行っております。
第1部.「女性の健康をもっと知って欲しい」柴田先生が本当に伝えたい思い【医学書インタビュー】
第2部.本ってどう書くの?執筆の裏側を聞いてきたよ!【柴田綾子先生】
(当記事)第3部.柴田綾子先生が産婦人科を目指した「きっかけ」【キャリアインタビュー】
また、以下の2つの記事も当サイトで公開しています。
- 柴田先生が執筆された医学書のまとめ記事
- 産婦人科ローテ前に読んでおきたい記事
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