メジカルビュー社×医学書レビュー.comコラボ企画の1冊目は
『論文を「読む」ための医療統計』
です!
が書評を書いてくださりました!
- 必要な統計学の知識を「どうやって短い時間で論文を正しく読むか」ということに着目して解説した本
- 愛すべき登場人物たちが論文を読み解いていく過程が本物の論文を参照しながら示されており、論文のどの部分をどう読んだらいいか、理論だけでなく実際の場面での応用方法をイメージしやすい
だそうです!それでは書評をご覧ください!
書名
論文を「読む」ための医療統計
レビュワープロフィール
麻酔科・8年目
各項目評価(5点満点)
- お求めやすさ(価格)
★★★★☆ - よみやすさ
★★★★☆ - 使いやすさ
★★★★☆ - オリジナリティ・独創性
★★★★★ - 満足度
★★★★★
どんな本?
臨床医が論文を読む際に必要な統計学の知識を「どうやって短い時間で論文を正しく読むか」ということに着目して解説した本
おすすめの読者層
実際の医学論文を例にとっていることから臨床医向けだと思いました(コメディカル向けには感じませんでした)。
書籍前半は、初期研修医〜後期研修医向けに感じたのですが、書籍後半ではベイズ・AIといった最近の統計トピックスについて実践的に解説しており、論文を読む機会のあるすべての医師におすすめできると思いました。
今まで他の同様のテーマの本や、Modern Epidemiologyなどの疫学専門書も読んでいたのですが、実際の論文の中での解釈の方法を通じて学べるという視点や、紹介している統計手法の幅広さという観点からは一番内容が充実していると感じました。
良い点
論文の探し方、初歩的な統計解析の解釈の仕方から記載しているので初学者にもわかりやすいと思いました。
後半のベイズ、AIの統計解析の解釈方法については、臨床医向けのわかりやすい教材は今まであまりなかったように思います。今まで難解な統計学の書籍を読んで学ばねばならなかったので、時間・労力的な問題で学ぶことを諦めていた医師にもおすすめです。
実際の論文のmethodの部分を例に挙げて解説しているので、統計学の理論より実践的な、論文の解釈のために統計学を学びたい人向けだと思いました。文献のQRコードが記載されており、手軽にタブレットやスマホで読み込みながら学習できるのは手軽で使いやすいと感じました。
悪い点
数式が多く、数学に苦手意識があると読みづらい部分がありました。一部イラストで数式の意味を示してあった部分があったのですが(P.177図2など)、もう少しイラストで視覚的にわかりやすい方が嬉しいです。ただ、全体的に多少数式を読み飛ばしても理解できるのは良い点でもあると思いました。
ベイズやAIについてもう少しページ数を割いてひとつひとつの解説をしてもよかったのかなと思いました。「こう言う方法とこういう方法がある」といった、方法論の紹介にとどまってしまっていたので、論文を通じた解説を読みたかったと思いました(ページ数の関係もあって難しいかもしれませんが…)
レビュワープロフィール
精神科・12年目
各項目評価(5点満点)
- お求めやすさ(価格)
★★★★☆ - よみやすさ
★★★★★ - 使いやすさ
★★★☆☆ - オリジナリティ・独創性
★★★★☆ - 満足度
★★★★☆
どんな本?
最新の医学論文を「読み解く」ことに焦点を当てた良書です。論文を理解するために必要な統計学の基礎的な知識から人工知能を用いた解析まで幅広く解説するだけでなく、批判的吟味の手法やポイントも解説されています。
おすすめの読者層
- 教科書にまだ載っていないような最新の治療法について、自分で文献を調べて批判的吟味したい若手~中堅医師
- 大学院に進学したものの、医学論文をどう読んだらいいのか全く分からない研究初心者
良い点
- 「正規分布」「p値」「オッズ比」など医学論文を読み解く上で欠かせない統計学の基礎から、「傾向スコア」「ベイズ統計」など「最近よく見かけるけれど何のことなのかよくわからない」という応用的な概念まで分かりやすく解説されている点
- 愛すべき登場人物たちが論文を読み解いていく過程が本物の論文を参照しながら示されており、論文のどの部分をどう読んだらいいか、理論だけでなく実際の場面での応用方法をイメージしやすい点
- 論文を読むだけではなく、批判的吟味の方法も解説されている点
悪い点
- 統計量の計算や統計モデルの説明パートで急にたくさんの数式が出てくるので、統計アレルギーのある初心者にとっては理解が難しかったかもしれない。あくまで論文を「読み解く」ことに焦点を絞り、論文によく出てくる統計量の説明を丁寧にしてもよかったかもしれない。
- 本書の前半と後半で難易度の差がある。特にパート5以降は複雑な統計学の知識を有することが必要とされており、著者が想定する「英語論文を読むことに抵抗がある」レベルの読者層が独学で理解することは難しいかもしれない。パート1から4までの具体例を複数示したり、自分で取り組むワークなどがあると知識の定着に役立つかもしれない。