書籍名
心電図ハンター②失神・動悸/不整脈編
レビューした人
医師5年目、脳卒中内科医
総合評価
★★★★★★★★★☆
読み返し度
★★★★☆
この参考書を読むタイミング
研修医1年目, 研修医2年目, 後期研修の働きたて, 後期研修中やそれ以降
この参考書を一文で表すなら
心原生失神の心電図およびコンサルトの達人になる
読者の感想
「失神外来を始めよう(文光堂)」、「この失神、どう診るか(メディカ出版)」に引き続き、失神の勉強のための3冊目として読みました。
どういった参考書かというと、以下の3点になります。
・心原生失神および動悸をきたす不整脈の解説が主。ページの約4分の3は失神について。
・不整脈の実際の波形の解説。
・その心電図を見た時のルーチンワーク、その後のマネジメントを詳しく解説。
本書の冒頭部分で「失神に対して循環器科に精査を依頼して、入院精査で心原生失神と診断できるのはほんの一部であり多くは正常なため、結局初回でとった病歴と心電図判断によりマネジメントが迫られる」との記載があります。よって、初回の心電図で心原生失神を疑う所見を読み取れる必要があり、その心電図に気づいた時のマネジメントを知っておく必要がある、というのが本書のコンセプトです。
これまでの2冊では、「こういった所見は心原生失神ハイリスク因子だよ」という解説はあったものの、実際の心電図波形の解説はほとんどありませんでした。本書では房室ブロック、脚ブロック、ブルガダ症候群、早期再分極症候群、不整脈原生右室心筋症、QT延長症候群、wide QRS tachycardia、デバイス関連などを詳しく解説しています。そして、なにより素晴らしいのがそのマネジメントまで詳しい点です。心電図は治療とセットで覚えましょうと書いてある本はよく見ますが、「緊急だから循環器コンサルト」としか書いていないことも多いです。本書ほど詳しく、循環器医の気持ちを考慮して、非循環器医は何が出来るのかを解説した本は自分は見たことがありません。
ただ、発作性房室ブロックなど来院時の心電図が心原生を疑わない場合はどうするのか、問診・身体診察ではどこに注目するのか、非心原性失神、植え込み型ループ式心電計の適応などについてなどはほぼ記載がなく、あくまで救急外来の心電図で不整脈を捉えることができたときに非循環器医はどう対応・マネジメントするのか?という本です。まあ、救急科の先生が書かれているので救急外来系の本になるのかなと思います。
コンサルトを受け、救急外来のその先も診なくてはならない循環器医が読むには物足りない本かもしれません。また、基本的な心電図の勉強をしてから読んだ方が効果的だと思うので、心電図の勉強としての1冊目としてはお勧めしません。