“A trial of lopinavir–ritonavir in adults hospitalized with severe Covid-19.”
Cao, Bin, et al. New England Journal of Medicine (2020).
原文はこちら
論文を一言でまとめると
武漢の単施設で行われたランダム化比較試験で、
入院の重症新型コロナウイルス感染症の患者に、
ロピナビル・リトナビルを投与しても、
臨床症状改善までの時間は短くならなかった。
Methods
[場所/施設]
中国の武漢にあるJin yin-Tan病院
[Patients]
2020/1/18-2/3の間に、RT-PCRでSARS-CoV-2の感染が診断され、肺炎の画像所見があり、SpO2 94%(room air)かP/F ratio 300mmHg以下の大人
[Intervention]
ロピナビル(400mg/day 1日2回)+リトナビル(100mg/day 1日2回)を14日間
[Comparison]
標準的治療のみ(緊急事態でありプラセボの準備はできなかった)
[Outcome]
臨床的な症状改善までの時間の短縮
(7段階の評価スケールで2段階の症状改善or生きて退院、のいずれか早い方)
[デザイン]
単施設における非盲検のランダム化比較試験
結果まとめ
・199名が研究の対象となり、99名がロピナビル・リトナビルの投与群に割り振られ、100名が対象群に割り振られた。
・研究対象者は、年齢の中央値は58歳(四分位範囲 49-68歳)であり、男性が60.3%であり、発症からランダム化割り振りまでの日数は13日(四分位範囲 11-16日)、ランダム化割り付け後28日目での死亡率は22.1%だった。
・臨床的な症状改善までの時間は、ロピナビル・リトナビルを投与した群と対象群のどちらも中央値16日であり、有意な差は見られなかった(hazard ratio 1.31 [95% CI 0.95-1.80; P=0.09])
・上記の解析から、ランダム化割付は受けたが実際にはロピナビル・リトナビルの投与を受けずに早期に亡くなってしまった3名を抜いて解析すると、臨床的な症状改善までの時間は、投与群の中央値15日、対象群の中央値16日であり、投与群で短かった(hazard ratio, 1.39 [95% CI 1.00-1.91])
・経過で6回採取した咽頭からの検体で、ウイルスの検出率は投与群と対象群で差はなかった。
・ロピナビル・リトナビル投与群では消化器症状の副作用が多く、4例の重症な消化器症状の副作用では全例でロピナビル・リトナビルの関与があるとされたが、重症の副作用自体の数は投与群で19例、対象群で32例と対象群で多かった。
・以上より、筆者らはロピナビル・リトナビル投与によって症状の改善は見られなかったが今後の研究の一助になるだろうと述べ、他の抗ウイルス薬との併用により効果が出る可能性にも触れた。
[Limitation]
・盲検化が出来ていないこと
・投与群でなぜかday1の咽頭の検体からのウイルス検出量が有意に多くなっていたこと
・ステロイドなどの他の治療薬の併用が交絡因子となっている可能性があること
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