書籍名
明日のアクションが変わる ICU輸液力の法則(中外医学社)
※記事内容に一部誤りがあったので修正いたしました。
申し訳ございません。(2020/7/4)
レビューした人
脳卒中内科医先生(医師5年目)
総合評価
★★★★★★★★☆☆
読み返し度
★★★★☆
参考書を読むのに有用なタイミング
初期研修医2年目、後期研修の働きたて, 後期研修中やそれ以降
その参考書を一文で表すとすれば?
循環管理の理論武装
読者の感想
輸液管理に関して、日々疑問になっていたものの勉強できずにいたため最近通読しました。
本書の構成として、①輸液の基本(体液のコンパートメント、輸液製剤について)、②循環管理の基本(輸液の必要性・目標、ショックとは何か、前負荷・後負荷、輸液反応性、輸液の指標・モニター、体液管理のフェーズなど)、③輸液管理の実際(敗血症性ショック、急性心不全、ARDS、腹部コンパートメント症候群)から成り、見開きA4で全320ページくらいです。
輸液というと研修医向けの本では、体液のコンパートメント・輸液製剤・維持輸液、電解質・酸塩基平衡など腎臓内科的な内容のものがほとんどです。
しかし、本書では電解質・酸塩基平衡の話はなく、「循環管理」の話が主体となります。
輸液の基本(体液のコンパートメント、輸液製剤について)の記載はありますが、最初の27ページまでです。
その後の約300ページには急性期循環管理・集中治療の世界が広がっています。
・「ショックの時には細胞外液を輸液することは知ってる。その先は何を目的に、何を指標にどう評価して、病態にどう応じてどれくらい輸液すればいいの?」
・「ショックを脱した後はどうするの?」 ・「そもそもショックってどう評価するの?」
・「サードスペースに漏れるよく聞くけど、結局何?」
・「その漏れた体液が戻ってくるって何?」
・「昇圧剤、強心薬ってどう使い分けるの?」
などといった疑問に本書は答えてくれます。
本書を読んで、まずショックとは何かという認識すら間違っていたことに気づかされました。
また、前負荷って簡単に言うけど、その評価は非常に難しく様々な所見を総合的に判断しなければなりません。
IVCが測定できるようになって喜んでいた研修医時代が恥ずかしくなりました。その評価方法を勉強・理解することで、心エコーではこういったことを意識して見よう、自分で測定できるようになろうといった勉強にもつながるかと思います。
理論の理解なしに循環管理は不可能だと思い知らされる1冊でした。
本書の対象として、若手の救急・集中治療医、循環器内科医、麻酔科医もしくはそれを目指す研修医2年目あたりでしょうか。
いわゆる研修医になりたてのための輸液本ではありません。
通読はなかなか気合がいりますが、大切なことは繰り返し説明されており、わかりやすいものでした。非常におススメです。