みなさんこんにちわ、サイト運営の川良です
本日は、今までの流れとは違い、薬剤師の方からの医学書レビューを掲載させていただきます!
ご紹介する病院薬剤師Dさんは、薬剤師歴16年のベテランであり、
「質の高い薬物療法のためには薬学の他に医学も必要」
とのお考えから、大変熱心に勉強されている方です
運営されているブログを拝見すると、特に抗菌薬の学習に関しては医師を上回るものがあるとも感じました!
今回、病院薬剤師Dさんとやりとりをするにつれ、我々医師が感じる参考書選びでの悩みを、同じように薬剤師たちも感じているということを知り、
参考書選びに悩む多くの医療者に、この記事の内容が届いて欲しいとの思いから、ご執筆いただきました
詳しいプロフィールなどはご本人より以下にありますので、早速ですがご覧ください!
目次
プロフィール
特集記事を執筆させていただく病院薬剤師D(Twitter:@byoyakud)です。
「病院薬剤師の勉強部屋」というブログをやってます。
おすすめの本を紹介させて頂く前に、薬剤師の私が、なぜ医師向けの医療専門書を読むようになったのか説明させてください。
私の経歴は、
- 大学病院で2年勤務
- 100床ほどの市中内科病院 2年勤務
- 200床ほどの市中総合病院 に現在勤務(2020年で12年目)
2020年の時点で病院薬剤師16年目です。
認定薬剤師の資格を2つ取得しています。
- 抗菌化学療法認定薬剤師
- NST専門療法士
先生方も御存知の通り中小病院は勤務する医師の人数が限られていますよね。
中小病院の医師は相談相手が少なく、自分で考えて非専門領域の薬物療法を対応することもあります。
そのため処方内容の相談をすると、若い医師から「薬の相談相手がいなくて困っていた」という話を聞きました。
添付文書に書いてある薬の使い方にプラスで自分の考えを伝えなければ薬剤師の専門性を発揮できないと考えています。
しかし、自分は基本的な医学知識や検査の知識が不足していたため、医師の話が理解できないこともありました。
患者さんの薬物治療に参画できず、ただ見ているだけの無力感におちいるときもありました。
そして、自分の提案した内容で上手くいくのか不安な日々を過ごすこともありました。
これらのことがきっかけで、私は、医学知識を勉強して質の高い処方支援をするために医師向けの医療専門書を読み始めました。
はじめは、薬剤師の私には難しくて理解できない本や優先度が低い本を購入してしまい失敗もしてきました。
そこで医師のブログでおすすめ本を探したり、人に聞いたりしておすすめの本を紹介してもらいました。
多くの診療科の薬物療法の相談を受けては医療専門書を探して購入し失敗もしましたが、今までに買ってきた医療専門書は200以上です。
病院薬剤師の目線で「病院薬剤師の勉強部屋」から厳選して紹介します。
よろしくお願いします。
感染症のおすすめ本
上記の3つから特におすすめの本を初学者向け、応用、実践の順にピックアップしました。
ねころんで読める抗菌薬
10段階評価
★★★★★★★☆☆☆
読み返し度
★★★☆☆
読んだ割合
★★★★★ 読破
「ねころんで読める抗菌薬」は、感染症の初学者が1冊目に読むのにおすすめです。
おすすめポイントは
・初学者にわかりやすい
・抗菌薬、微生物の特徴がわかる
・感染症治療に必要な知識がわかる
ねころんで2時間ほどで読める内容です。
例えが秀逸で、イラストのおかげで定着記憶になりやすいです。
ゆるい本に見えますが、感染症診療の基本を勉強できる必要十分な内容で構成されています。
まず、この本を読んで次のステップに進むのがおすすめです。
私のブログも参考にしていただけると嬉しいです。
感染症を勉強する薬剤師は「ねころんで読める抗菌薬」を最初に読もう
感染症まるごとこの一冊
10段階評価
★★★★★★★☆☆☆
読み返し度
★★★★☆
読んだ割合
★★★★★ 読破
「感染症まるごとこの一冊」は感染症の基本を固める本です。
おすすめポイントは
・1冊で感染管理・診療、微生物、抗菌薬、ワクチンをカバー
・マニアックな内容を省いて必要十分
・勉強しやすい構成
基本忠実というのがこの本の特徴です。
肺炎の原因微生物トップ3はこれ、というようにポイントが書いてあるので読みやすいです。
感染症の2冊目におすすめします。
私のレビューも参考にしていただけると嬉しいです。
薬剤師が感染症の基本を勉強するには「感染症まるごとこの一冊!」
抗菌薬の考え方、使い方
10段階評価
★★★★★★★★☆☆
読み返し度
★★★☆☆
読んだ割合
★★★★★ 読破
「抗菌薬の考え方、使い方」は、本当の抗菌薬の使い方がわかる名著です。
おすすめポイント
・抗菌薬のデキる使い方がわかる
・読み物として楽しく読める
抗菌薬の基本というより、応用を勉強する本ですね。
知らなかったなー、こんな使い方があるんだなーと勉強になる事が多いです。
ただし、初学者がいきなり読むと混乱します。
抗菌薬の基本を身につけてから読むのがおすすめです。
私のレビューも参考にしていただけると嬉しいです。
抗菌薬の本当の使い方がわかる!薬剤師必読の「抗菌薬の考え方、使い方」
感染症診療のロジック
10段階評価
★★★★★★★★★☆
読み返し度
★★★★★
読んだ割合
★★★★★ 読破
「感染症診療のロジック」は感染症診療の原則を勉強できます。
感染症の基本はわかってきたかも…と思った頃に読むのがおすすめ。
おすすめポイントを3つ
・感染症診療の考え方がわかる
・根拠をもって抗菌薬を選択できる
・臓器別に感染症が勉強できる
抗菌薬を理解できても、正しい感染症治療ができないと意味がありません。
感染症診療に大事な感染部位、微生物、抗菌薬の関係が大事です。
悩んだときに読み返すと、良いこと書いてある!と再確認できます。
私のレビューも参考にしていただけると嬉しいです。
「感染症診療のロジック」で感染症診療が理解できる薬剤師になろう!
感染症プラチナマニュアル
10段階評価
★★★★★★★☆☆☆
読み返し度
★☆☆☆☆
読んだ割合
★★☆☆☆
「感染症プラチナマニュアル」はポケットサイズのマニュアルです。
サッと確認したいときに重宝します。
おすすめポイント
・ポケットサイズの必要十分な内容
・改定時のアップデートの箇所がわかりやすい
忖度なく第3世代経口セフェムをバッサリ切ってくれてる本です。
信頼できるマニュアルですね。
common diseaseにしぼった内容で実践的です。
私のレビューも参考にしていただけると嬉しいです。
薬剤師は「感染症プラチナマニュアル」をポケットに入れておこう!
できる!見える!活かす! グラム染色からの感染症診断
10段階評価
★★★★★★★☆☆☆
読み返し度
★★☆☆☆
読んだ割合
★★★★☆
「できる! 見える! 活かす! グラム染色からの感染症診断」は、グラム染色の結果をどう考えればいいのか勉強できます。
おすすめポイント
・グラム染色のやり方がわかる
・グラム染色の解釈がわかる
・臓器別のグラム染色の活かし方がわかる
グラム染色は実際にやる方は少ないでしょうが、コストパフォーマンスに優れた検査です。
培養検査を出したほうが良いのはわかったけど、解釈がわからない…という方におすすめです。
循環器(心電図含む)のおすすめ本
上記の2つから特におすすめの本を循環器と心電図に分けてオススメ順にピックアップしました。
循環器治療薬ファイル
10段階評価
★★★★★★★★★☆
読み返し度
★★★★☆
読んだ割合
★★★☆☆
「循環器治療薬ファイル」は、循環器の薬の具体的な使い方が書いてあります。
辞書的な使い方をしてもOK。
第2版は通読しましたが第3版は全部読んでないので辞書的に使ってます。
おすすめポイント
・ほとんどの循環器治療薬について書いてある。
・引用文献と著者の考えが書いてある。
・やさしい語り口で読みやすい
クリティカルな状況で使う薬は「循環器治療ファイル」と別の本ですが「ICU/CCUの薬の考え方、使い方」を参考にします。
著者の姉妹書「不整脈治療薬ファイル」、「循環器病態学ファイル」もおすすめです。
循環器の勉強するときにこの本は外せないと思います。
モダトレ
10段階評価
★★★★★★★★★★
読み返し度
★★★★★
読んだ割合
★★★★★ 読破
「モダトレ」は、薬剤師が心電図、心エコー、画像を薬物療法にどう活かすことができるのか?という視点で書かれた本です。
僕たち薬剤師は病気の診断しません。
適正な薬物療法が患者さんに行われているか?
使用している薬が、有害になっていないか?
この視点をもつために心電図、心エコー、画像の基本的な知識を薬物療法に活かそうとこの本を読みました。
循環器の内容が半分を占めています。
学生さんが初めてモダリティの勉強するときに有用ではないでしょうか?
私の渾身のレビュー記事もよろしければ読んでください。
薬剤師が心電図、心エコー、画像を薬物療法に活かすには「モダトレ」で勉強するのがおすすめ!
薬剤師よ, 心電図を読もう!
10段階評価
★★★★★★★☆☆☆
読み返し度
★★★★★
読んだ割合
★★★★★ 読破
「薬剤師よ, 心電図を読もう!」は心電図を薬物療法にどう活かすのか勉強できます。
おすすめポイント
・頻脈、徐脈の薬物療法が理解できる
・薬剤師と医師の対話形式で読みやすい
医師にこの本を取り上げるのは大変恐縮ですが…
薬剤師が1冊目読むには難しい → 医師の1冊目ならスラスラ読める良書では?と考えました。
モニター心電図、頻脈、徐脈、脚ブロック、電気軸を薬物療法に絡めて書いてあります。
一度、書店で見てみてください。
不整脈判読トレーニング
10段階評価
★★★★★☆☆☆☆☆
読み返し度
★★☆☆☆
読んだ割合
★★★★★ 読破
「不整脈判読トレーニング」は頻脈、徐脈を中心とした不整脈を判読する本です。
薬剤師は、薬剤の副作用や抗不整脈薬の相談を受けることがあるので、視野を広げるために読みました。
おすすめポイント
・教科書通りではない波形でトレーニングできる
・波形をみる→解答→解説と頭に入りやすい
輸液・電解質のおすすめ本
薬剤師が輸液・電解質の勉強するためにおすすめ本10冊から特におすすめの本をオススメ順にピックアップしました。
輸液を学ぶ人のために
10段階評価
★★★★★★★★☆☆
読み返し度
★★★☆☆
読んだ割合
★★★★★ 読破
「輸液を学ぶ人のために」は、導入本として取り上げあられますが、初学者がステップアップするための本と考えています。
おすすめポイント
・末梢輸液から栄養輸液まで幅広く勉強できる
・輸液をする本当の意味は?と考えることができる
・患者さんとどう向き合うか考えさせられる
検査値を正常化するのが目的じゃない、患者さんを相手にしているんだ
これがこの本のメッセージの1つではないでしょうか。
おすすめです。
輸液ができる、好きになる
10段階評価
★★★★★★★☆☆☆
読み返し度
★★★★☆
読んだ割合
★★★★★ 読破
「輸液ができる、好きになる」は実臨床に即した内容です。
おすすめポイント
・よく出会うケースが書いてある
・Na、K異常に対応できるようになる
・模擬症例で理解度を確認できる
目次を見ると
「生理食塩液、5%ブドウ糖、フロセミドを投与したら電解質がどうなるかわかりますか?」
薬剤師としてはすごく気になるキーワードです。
これを見ただけで即買いの1冊です。
私のレビューも参考にしていただけると嬉しいです。
「輸液ができる、好きになる」で薬剤師に必須の輸液を勉強する
酸塩基平衡、水・電解質が好きになる
10段階評価
★★★★★★★☆☆☆
読み返し度
★★★★☆
読んだ割合
★★★★★ 読破
「酸塩基平衡、水・電解質が好きになる」は電解質異常に対応するのに必須の本。
「輸液ができる、好きになる」の姉妹本みたいな位置づけですね。
おすすめポイント
・症例を理解するための「マジックナンバー」が秀逸
・各項目が必要十分量
・症例問題で理解度を確認できる
初学者が1冊目に読むと挫折するかもしれません。
ただし、とても良いことが書いてある本です。
明日から活かせるマジックナンバーを覚えてどんどん使ってみましょう。
私のレビューも参考にしていただけると嬉しいです。
「酸塩基平衡、水・電解質が好きになる」で輸液の処方支援ができる薬剤師
腎臓のおすすめ本
薬剤師が腎臓を勉強するときにおすすめの本7冊から特におすすめの本をオススメ順にピックアップしました。
竜馬先生の血液ガス白熱講義 150分
10段階評価
★★★★★★★★★☆
読み返し度
★★★★★
読んだ割合
★★★★★ 読破
「竜馬先生の血液ガス白熱講義 150分」は血液ガスを勉強するときに最初に読む本です。
おすすめポイント
・150分で血液ガスの考えかたがわかる
・必要十分な内容
・コストパフォーマンスが高い
薬剤師の自分でも理解できるくらいわかりやすい本です。
血液ガス分析の結果は全項目理解できないといけないの…?
と疑問に思っていましたが、この本を読むと見るべきポイントがわかります。
この本を1冊目に読んでから次のステップに進むのがおすすめです。
考える腎臓病学
10段階評価
★★★★★★★★★☆
読み返し度
★★★★★
読んだ割合
★★★★☆
「考える腎臓病学」は電解質異常が起こったときに腎臓は何をしているのかがわかります。
私は、とても好きな本です。
おすすめポイント
・症例形式で実臨床に即した内容
・他の本にない切り口で書いてある
・電解質異常の一歩先の対応ができるようになる
腎臓内科医の専門医レベルも含まれるため繰り返し読んで思考を身につけるのがおすすめです。
レジデントのための腎臓教室 ベストティーチャーに教わる全14章
10段階評価
★★★★★★★☆☆☆
読み返し度
★★★☆☆
読んだ割合
★★★★★ 読破
「レジデントのための腎臓教室 ベストティーチャーに教わる全14章」は医学生、研修医向けのわかりやすい本です。
腎臓の基本が勉強でき、辞書的に読むのにも向いてます。
おすすめポイント
・腎臓の働き、検査について勉強できる
・腎疾患について勉強できる
・腎疾患で注意する薬剤について勉強できる
なぜ、この検査をするのか専門医が説明しているので、豆知識もあっておすすめです。
消化器のおすすめ本
薬剤師が消化器を勉強するときにおすすめの本6冊から特におすすめの本をオススメ順にピックアップしました。
肝炎の診かた、考えかた
10段階評価
★★★★★★★★☆☆
読み返し度
★★★☆☆
読んだ割合
★★★★☆
「肝炎の診かた、考えかた」は、肝炎と肝機能に関連する検査の勉強ができます。
肝臓の検査をしっかり勉強して消化器内科医師にコンサルタントするときに参考になりそうですね。
おすすめポイント
・検査結果に対する著者の先生の考えかたが書いてある
・豆知識や症例から学ぶポイントが書いてる
いまはこうする肝疾患vs.薬物療法 2020年 1 月号
10段階評価
★★★★★★★☆☆☆
読み返し度
★★★☆☆
読んだ割合
★★★☆☆
「いまはこうする肝疾患vs.薬物療法」は月刊薬事 2020年 1月の増刊号です。
薬剤師は、肝逸脱酵素、胆道系酵素が高値になると薬剤性を疑いたくなりますが、医師がまず考える鑑別疾患について勉強できます。
おすすめポイント
・この1冊で肝炎マスターになれるくらいの内容
・知識をアップデートするのに最適
さいごに
私は、基本的医学知識を勉強してより良い薬物療法を提案するために医療専門書を読んできました。
病態生理、解剖学の知識が不足している薬剤師は、医師と違い学生時代から遅れがあります。
自分のレベルに合った本をさがす苦労が合ったからこそ、今の本選びに活きていると考えています。医学書レビュー.comのようなサイトがあると、同じ悩みをかかえる薬剤師の助けになるためすごくありがたいです。
私は、あくまで「薬剤師」が必要な知識にしぼって本を選び紹介しています。
「ミニドクター」にならないよう、「薬」の専門家として自分の軸足は「薬学」です。
これを見失ってはいけないと考えています。
これからも医療専門書を紹介していきますので「病院薬剤師の勉強部屋」をよろしくお願いします。