書籍名
POC心エコー ただいま診断中(中外医学社)
レビューした人
脳卒中内科医先生
総合評価
★★★★★★☆☆☆☆
読み返し度
★★★★☆
この参考書を読むタイミング
研修医2年目
この参考書を一文で表すなら
救急対応に心エコーを活かすためのマニュアル
読者の感想
「他書で心エコーの解釈などはなんとなく学んで、検査室での心エコーのレポートを読むのにはそこまで困っていないけれど、実際に自分でやるとしたら傍胸骨左縁長軸像と短軸像、IVCの描出が精一杯」というレベルでしたが、もうちょっと自分でなんとかしてみたいと思い読んでみました。
見開きA4で全270ページくらい。内容としては ① まずは基本断面の描出方法・Mモードやドプラなどを解説 ② Bモードのみ使用し血行動態を把握する方法(FOCUS)の解説 ③ 検査室レベルではないが、緊急疾患に対して鑑別疾患の診断や合併症の除外を行うTTE Lの解説(急性心不全、心タンポ、ACS、AS、急性AR、急性MR、DCM、HOCM、急性心筋炎、IE、大動脈解離についてそれぞれ解説している) ④ 実際の症例で学ぶPOC心エコー という構成となっています。
上記①②まで読んでみて、「Bモードだけでここまでは評価できるのか。じゃあ自分でもできるようにならなきゃな」と感じました。ショック時のエコーでの評価項目・フローチャートもわかりやすくてよかったです。
ただ、③のTTE Lのレベルになると、ここから各種ドプラを使用することになるのですが、その方法や解釈の解説に物足りなさを感じました。例えば急性心不全の項で、「三尖弁逆流最大速度から右室-右房圧格差を算出し、中心静脈圧を足せば肺動脈収縮期圧となる」といった一文があっても、なぜそうなるのかの解説はありません。自分は他書でも心エコーの解釈や心不全、肺動脈カテーテルなどの勉強をしていたので良かったですが、本当の初学者には難しいと思います。
まとめると、 ①②は本当の初学者でも役立つ内容だと思います。 ③は初学者には厳しい。自分のようなレベルで、「検査技師や循環器内科医ほどにはできなくても、②の内容以上に、さらにどこを見てどう考えるのか」を学びたいという方にはコンパクトにまとまっていてちょうどいい内容かと思います。④で実際の症例で学ぶことでイメージも付きやすいです。
個人的には、 「これくらいは自分でできるようになりたいと思ってたんだよね」という自分のニーズに合っていました。各疾患での評価項目も多すぎず、比較的特異度の高いものを選んでくれているので、コンパクトでちょうどいい内容です(その分初学者には簡素に感じてしまうのかもしれません)。自分でもトレーニングしていこうというモチベーションにもなる1冊でした。