COVID-19

イスラエルにおけるCOVID-19のワクチンの実際の効果

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タイトル

“BNT162b2 mRNA Covid-19 Vaccine in a Nationwide Mass Vaccination Setting”

Noa Dagan, et al. New England Journal of Medicine

原文はこちら

論文を一言でまとめると

新型コロナウイルスに対するmRNAワクチン(ファイザー社)が実際に多くの人に接種されたイスラエルのデータを用いて、

ワクチン接種後の経過をワクチンを接種しなかった人と比べると、

ワクチンの有効率が、PCRによる感染確認で92% 、症状のある感染で94% 、入院で87% 、重症化で92%、

とランダム化比較試験の結果と同様に、高い有効性があることが示された。

Methods

[場所/施設]

イスラエルの国民の53%の保険者であるClalit Health Services(CHS)からのデータを利用

[Patients]

16歳以上で、これまでPCR検査でSARS-CoV-2の陽性となったことのない、過去12ヶ月前からClalit Health Services(CHS)のメンバーだった方

[Intervention]

BNT162b2 mRNA Covid-19ワクチン(ファイザー社のワクチン)を接種した

[Comparison]

年齢・性別・sector(general Jewish, Arab, or ultra-Orthodox Jewish)・居住地・インフルエンザの接種歴・妊娠・合併症の数、でマッチさせたコントロールを接種者と1:1で設定した

[Outcome]

  1. PCR検査で陽性で症状がない
  2. 症状のあるCOVID-19感染
  3. 入院
  4. 症状が重症化
  5. 死亡

上記の5つをアウトカムとして測定した

[デザイン]

1:1でマッチドコントロールをおいた、観察研究

結果まとめ

・CHSメンバーのうち、1,503,216人がワクチンを接種し、1,163,534人が研究の対象となり、実際に596,618人にワクチンを打っていないコントロールがあてられた。

・ワクチン接種群は、年齢の中央値は45歳(四分位範囲 35-62歳)、50%が男性であり、その他のマッチ項目に関しても、コントロール群と比較して大きな差は認めなかった。

ワクチンの2回目の接種から7日以降には、

ワクチンの有効率が、

 PCRによる感染確認で92% (95%CI [88-95%])、

 症状のある感染で94% (95%CI [87-98%])、

 入院で87% (95%CI [55-100%])、

 重症化で92% (95%CI [75-100%])であった。

・以上より筆者らは、この論文ではランダム化比較試験と同様のワクチンの有効性を治験ではない状況で示しており、入院・重症化・死亡といったアウトカムに関してもワクチンが高い有効性があることを示している、と述べた。

[Limitation]

・観察研究のため交絡因子による影響を否定できない

・交絡因子を減らすため、医療者や介護施設の入居者などを対象から外している

・データの性質上、症状の発症日を解析に含むことができなかった

[次郎作の読んだ感想]

新型コロナウイルスのワクチンを実際に接種したところやはりとても有効だ、ということを示した論文がイスラエルからついに出ました。

ワクチンが作られる時の第III相試験(ランダム化比較試験)では、とても信頼性の高いとされる「ランダム化比較試験」という研究手法が用いられますが、

サンプルサイズが制限される、組み入れ基準が厳しい、とても制御された環境下での治療である、などといくつかの欠点も知られています。

今回は、リアルワールドデータと呼ばれるような大きなサイズのデータを用いて、観察研究ながらマッチドコントロールをおいた質の高い研究デザインが使われています。

有効性90%以上となると、本当に新型コロナを気にしなくて生活できる日常が戻ってくるのではないか、と期待してしまうくらい衝撃的な有効性です。

今後も実際の世界での研究が、アメリカあたりから続々出てくると思うので楽しみに待とうと思います。

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