メジカルビュー社×医学書レビュー.comコラボ企画の1冊目は「ちょっと待った!その抗菌薬はいりません」
抗菌薬の適正使用についてしっかりと学べる1冊!
研修医のみならず感染症診療に従事する様々な分野の臨床医にも分かりやすい1冊とのこと!
それでは書評をご覧ください!
書名
ちょっと待った!その抗菌薬はいりません
レビュワープロフィール
初期研修医1年目
各項目評価(5点満点)
- お求めやすさ(価格)
★★★☆☆ - よみやすさ
★★★★☆ - 使いやすさ
★★★★☆ - オリジナリティ・独創性
★★★★★ - 満足度
★★★★☆
どんな本?
「その抗菌薬が本当に必要か。今すぐに必要なのか。」という抗菌薬を投与する以前に診療時に考えるべきことが学べる本。感染症の治療だけでなく、日常診療においても身に着けておくべき診断・判断にいたる思考回路も学ぶことができる一冊です。
おすすめの読者層
「この感染症にはこの薬!」といった一通りの抗菌薬の知識は身につけた上で、実際の診療現場で実践していきたい人
特に内科に進みたい研修医は一度通読しておけば、将来避けては通れない感染症診療において『風邪に漫然と抗菌薬投与』といったなんとなくの診療がいかに危険かを理解し、感染症診療に対する基本の姿勢が学べるかと思います。
良い点
各チャプターが3‐4ページほどでまとまっているので空いた時間に読むにはちょうどいいです。特に、Ⅳ章は症状ごとに考えうる感染症、鑑別すべき疾患、投与する抗菌薬、抗菌薬投与時の注意点が全て掲載されたうえで5ページ以内に収まっているため、ちょっとした調べものにも活用できるかと思います。
高齢者や免疫抑制患者、腎不全など合併症のある患者に抗菌薬を投与する際、具体的にどのような点に気を付ければいいのかまとまっているのがよかったです。
投与する抗菌薬の一日投与量、投与回数、投与経路(点滴か内服か、小児の場合はシロップがあるかなど)まで書かれているのでわかりやすいです。
悪い点
抗菌薬を一から学びたい人向けというより、主に実際に診療をする立場の人が注意すべきことや思考回路について記された本です。実際、最初の三章は抗菌薬の説明というよりも診療時に陥りがちなバイアスやピットフォールの説明に多くのページ数が割かれています。
そのため、手っ取り早く抗菌薬のイロハを学びたい人には冗長に感じられると思います。
レビュワープロフィール
医師18年目
専門:呼吸器内科、感染症科、アレルギー科
各項目評価(5点満点)
- お求めやすさ(価格)
★★★★☆ - よみやすさ
★★★★☆ - 使いやすさ
★★★★☆ - オリジナリティ・独創性
★★★★★ - 満足度
★★★★★
どんな本?
抗菌薬投与の必要性の有無や、呼吸器・消化器・頭頚部などの症状に対して各々どう診断してどう治療をするのか、また高齢者や基礎疾患のある患者さん、妊婦・授乳婦などに応じて使用可能な抗菌剤の選択、代表的薬剤の抗菌スペクトルなどを説明してくれています。
おすすめの読者層
・抗菌剤の基本的な投与法を学びたい研修医
・抗菌剤について原点に戻って学びたい臨床医
・感染症はどの科でも経験する疾患なので、内科医に限らず外科医、小児科医、産婦人科医、耳鼻咽喉科医、等々の医師でも十分に学べると思います。
良い点
・バイタルサイン経過表の図示がなされ、どのタイミングで抗菌剤投与をすべきなのか、という記載が臨床に即してとても分かりやすい
・所々に図、表、写真などが掲載されてる点が分かりやすい
・呼吸器や消化器等の症状に応じて、どのように診断し、どのように抗菌剤を使用するかどうか、本当に抗菌剤投与が必要であるのか、ということを明記されている点
・高齢者、基礎疾患のある方、また妊婦・授乳婦などでどの抗菌剤は使用できるorできないを明記されている点
総じて、抗菌剤の基本を学びたい研修医をはじめとして、感染症の診療に従事している臨床医にも分かりやすい参考書だと思います。
悪い点
全体的にとても分かりやすい抗菌剤の参考書ですが、強いて言えばp44の「特異的検査は順を追って、根拠をもって」で記載されている内容をですが、parrallel testingをしない方がいい理由をもう少し根拠を述べて頂ければ分かりやすいかな~と思いました。
レビュワープロフィール
医師5年目
専門:腎臓内科
各項目評価(5点満点)
- お求めやすさ(価格)
★★★★☆ - よみやすさ
★★★★☆ - 使いやすさ
★★★☆☆ - オリジナリティ・独創性
★★★★★ - 満足度
★★★★☆
どんな本?
抗菌薬適正使用の基本的な考え方や注意事項がわかりやすく、かつ実践的に書かれている。最後の章には代表的薬剤の抗菌スペクトルも簡潔にまとめてあり、わかりやすい。
感染症診療への姿勢を見直すきっかけになる一冊。
おすすめの読者層
少しずつ診療に慣れてきた、研修医初期以降。
「この抗菌薬の使い方は正しかったのか?」「こういう時に抗菌薬迷う…」など、実際に患者を目の前にした時に出てきた感染症の疑問を解消したい場合、実践での考え方を学びたい場合におすすめ。
良い点
・Ⅳ章 広域抗菌薬からde-escalationができにくい
→ついつい広域抗菌薬から開始しがちだが、抗菌薬選択を見直すきっかけになる。
・Ⅴ章 抗菌薬が効かない場合の考え方
→抗菌薬の変更が必要かどうか考えるのに、状況毎にパターン分けして書いてあるので網羅的に考えられる。
・Ⅵ章 こんな患者さんで使える薬・使えない薬
→高齢者・糖尿病・肝腎機能低下・免疫抑制患者など、易感染性かつ重篤になりやすい場合ごとの注意事項がまとめてあり、とても分かりやすかった。
悪い点
・Ⅰ、Ⅱ章のMEMOで言葉の説明が長めに書いてあり、第一印象で読みづらい本なのかもしれない、と思ってしまいました(その後の章では感じませんでした)。もう少し短くするか、項目を少なくするなどしてもよいかと思います。
レビュワープロフィール
次郎作(医師5年目)
専門:小児科
各項目評価(5点満点)
- お求めやすさ(価格)
★★★★☆ - よみやすさ
★★★☆☆ - 使いやすさ
★★★☆☆ - オリジナリティ・独創性
★★★☆☆ - 満足度
★★★☆☆
どんな本?
感染症科の専門医の先生が、抗菌薬の適正使用を前面に主張した一冊
おすすめの読者層
抗菌薬の使い方について、より多くの意見を聞いてみたい時(3-5冊目)に読む参考書。1-2冊目に読むと混乱する可能性あり。
良い点
症状や疾患ごとに抗菌薬の量や、使用するときの注意点などが書いてあってよかった。また、「高齢者」「腎機能障害」など特定のハイリスクの状況での注意点が書いてあって良いと思いました。
細かい各論の部分は、有益な情報も多かったです。
悪い点
全体的に「抗菌薬をあまり使わないように」という方向に、全力で「バイアスをかけてくる」内容になっているので、個人的には初期研修医などの初学者には優しくないなぁと感じました。特に最初のI-III章は、他の感染症の本でも聞いたことないような「自論」も多いように感じました。
抗菌薬をテキトーに使用して欲しくない気持ちはわかりますが、「こんな時には、必要です」という説明の仕方の方が読んでいて分かりやすいなぁと思いました。