みなさんこんにちわ、サイト運営の川良です。
まずは医学部医学科6年生のみなさん、国家試験並びに国家試験の合格発表おつかれさまでした!
国家試験に合格した方々は、来月から初期研修医となり、病棟や救急外来での業務が始まることと思います!
…
……
………
でも、急に「医療に少し詳しい学生」が「医師」になるのって不安ですよね。
少し前までは、「医学生」として病棟実習で責任も権限もなく勉強していたはずなのに、気が付くと「医師」としてある程度の責任と権限を与えられるのです。
そんな劇的な状況変化に対して、皆さんのなかに大きな不安があるのも、もっともだと思います!
しかし!その大きな不安は放っておいても、小さくもなりませんし、解決することもありません。
その不安は、ただただ書籍による、あるいは病棟業務をこなしながら必死に勉強することによってのみ少しづつ小さくなっていくのです!
………
……
…
そんな風に考えながら初期研修医向けの記事でも作ろうかと考えていた時。
日ごろから別件の業務でお世話になっていたメジカルビュー社様より、
「4月から初期研修医になる先生たちに向けて、おすすめ本を紹介するキャンペーンを一緒にやりませんか?」
とのお誘いをいただき、今回のコラボが実現しました!
今回の企画の趣旨としては、
メジカルビュー社様から提案のあった5冊の諸書籍について、各々先生方に依頼のうえ書評を書いてもらい、それをサイト上/twitter上で紹介していく
というものになります!
今回対象となった書籍は以下の5冊です!
もちろん執筆者の先生方には、中立的な立場から書評を書いていただいているので、これをご参考に自分に合った医学書を探して、病棟業務が始まるまでの2週間で勉強してみてくださいね!
それでは上の5冊の書評を見ていきましょう!
(※書籍名をクリックすると該当書籍の書評にジャンプできます。)
1. ちょっと待った!その抗菌薬はいりません
メジカルビュー社×医学書レビュー.comコラボ企画の1冊目は『ちょっと待った!その抗菌薬はいりません』
抗菌薬の適正使用についてしっかりと学べる1冊!
研修医のみならず感染症診療に従事する様々な分野の臨床医にも分かりやすい1冊とのこと!
それでは書評をご覧ください!
書名
ちょっと待った!その抗菌薬はいりません
レビュワープロフィール
初期研修医1年目
各項目評価(5点満点)
- お求めやすさ(価格)
★★★☆☆ - よみやすさ
★★★★☆ - 使いやすさ
★★★★☆ - オリジナリティ・独創性
★★★★★ - 満足度
★★★★☆
どんな本?
「その抗菌薬が本当に必要か。今すぐに必要なのか。」という抗菌薬を投与する以前に診療時に考えるべきことが学べる本。感染症の治療だけでなく、日常診療においても身に着けておくべき診断・判断にいたる思考回路も学ぶことができる一冊です。
おすすめの読者層
「この感染症にはこの薬!」といった一通りの抗菌薬の知識は身につけた上で、実際の診療現場で実践していきたい人
特に内科に進みたい研修医は一度通読しておけば、将来避けては通れない感染症診療において『風邪に漫然と抗菌薬投与』といったなんとなくの診療がいかに危険かを理解し、感染症診療に対する基本の姿勢が学べるかと思います。
良い点
各チャプターが3‐4ページほどでまとまっているので空いた時間に読むにはちょうどいいです。特に、Ⅳ章は症状ごとに考えうる感染症、鑑別すべき疾患、投与する抗菌薬、抗菌薬投与時の注意点が全て掲載されたうえで5ページ以内に収まっているため、ちょっとした調べものにも活用できるかと思います。
高齢者や免疫抑制患者、腎不全など合併症のある患者に抗菌薬を投与する際、具体的にどのような点に気を付ければいいのかまとまっているのがよかったです。
投与する抗菌薬の一日投与量、投与回数、投与経路(点滴か内服か、小児の場合はシロップがあるかなど)まで書かれているのでわかりやすいです。
悪い点
抗菌薬を一から学びたい人向けというより、主に実際に診療をする立場の人が注意すべきことや思考回路について記された本です。実際、最初の三章は抗菌薬の説明というよりも診療時に陥りがちなバイアスやピットフォールの説明に多くのページ数が割かれています。
そのため、手っ取り早く抗菌薬のイロハを学びたい人には冗長に感じられると思います。
レビュワープロフィール
医師18年目
専門:呼吸器内科、感染症科、アレルギー科
各項目評価(5点満点)
- お求めやすさ(価格)
★★★★☆ - よみやすさ
★★★★☆ - 使いやすさ
★★★★☆ - オリジナリティ・独創性
★★★★★ - 満足度
★★★★★
どんな本?
抗菌薬投与の必要性の有無や、呼吸器・消化器・頭頚部などの症状に対して各々どう診断してどう治療をするのか、また高齢者や基礎疾患のある患者さん、妊婦・授乳婦などに応じて使用可能な抗菌剤の選択、代表的薬剤の抗菌スペクトルなどを説明してくれています。
おすすめの読者層
・抗菌剤の基本的な投与法を学びたい研修医
・抗菌剤について原点に戻って学びたい臨床医
・感染症はどの科でも経験する疾患なので、内科医に限らず外科医、小児科医、産婦人科医、耳鼻咽喉科医、等々の医師でも十分に学べると思います。
良い点
・バイタルサイン経過表の図示がなされ、どのタイミングで抗菌剤投与をすべきなのか、という記載が臨床に即してとても分かりやすい
・所々に図、表、写真などが掲載されてる点が分かりやすい
・呼吸器や消化器等の症状に応じて、どのように診断し、どのように抗菌剤を使用するかどうか、本当に抗菌剤投与が必要であるのか、ということを明記されている点
・高齢者、基礎疾患のある方、また妊婦・授乳婦などでどの抗菌剤は使用できるorできないを明記されている点
総じて、抗菌剤の基本を学びたい研修医をはじめとして、感染症の診療に従事している臨床医にも分かりやすい参考書だと思います。
悪い点
全体的にとても分かりやすい抗菌剤の参考書ですが、強いて言えばp44の「特異的検査は順を追って、根拠をもって」で記載されている内容をですが、parrallel testingをしない方がいい理由をもう少し根拠を述べて頂ければ分かりやすいかな~と思いました。
レビュワープロフィール
医師5年目
専門:腎臓内科
各項目評価(5点満点)
- お求めやすさ(価格)
★★★★☆ - よみやすさ
★★★★☆ - 使いやすさ
★★★☆☆ - オリジナリティ・独創性
★★★★★ - 満足度
★★★★☆
どんな本?
抗菌薬適正使用の基本的な考え方や注意事項がわかりやすく、かつ実践的に書かれている。最後の章には代表的薬剤の抗菌スペクトルも簡潔にまとめてあり、わかりやすい。
感染症診療への姿勢を見直すきっかけになる一冊。
おすすめの読者層
少しずつ診療に慣れてきた、研修医初期以降。
「この抗菌薬の使い方は正しかったのか?」「こういう時に抗菌薬迷う…」など、実際に患者を目の前にした時に出てきた感染症の疑問を解消したい場合、実践での考え方を学びたい場合におすすめ。
良い点
・Ⅳ章 広域抗菌薬からde-escalationができにくい
→ついつい広域抗菌薬から開始しがちだが、抗菌薬選択を見直すきっかけになる。
・Ⅴ章 抗菌薬が効かない場合の考え方
→抗菌薬の変更が必要かどうか考えるのに、状況毎にパターン分けして書いてあるので網羅的に考えられる。
・Ⅵ章 こんな患者さんで使える薬・使えない薬
→高齢者・糖尿病・肝腎機能低下・免疫抑制患者など、易感染性かつ重篤になりやすい場合ごとの注意事項がまとめてあり、とても分かりやすかった。
悪い点
・Ⅰ、Ⅱ章のMEMOで言葉の説明が長めに書いてあり、第一印象で読みづらい本なのかもしれない、と思ってしまいました(その後の章では感じませんでした)。もう少し短くするか、項目を少なくするなどしてもよいかと思います。
レビュワープロフィール
次郎作(医師5年目)
専門:小児科
各項目評価(5点満点)
- お求めやすさ(価格)
★★★★☆ - よみやすさ
★★★☆☆ - 使いやすさ
★★★☆☆ - オリジナリティ・独創性
★★★☆☆ - 満足度
★★★☆☆
どんな本?
感染症科の専門医の先生が、抗菌薬の適正使用を前面に主張した一冊
おすすめの読者層
抗菌薬の使い方について、より多くの意見を聞いてみたい時(3-5冊目)に読む参考書。1-2冊目に読むと混乱する可能性あり。
良い点
症状や疾患ごとに抗菌薬の量や、使用するときの注意点などが書いてあってよかった。また、「高齢者」「腎機能障害」など特定のハイリスクの状況での注意点が書いてあって良いと思いました。
細かい各論の部分は、有益な情報も多かったです。
悪い点
全体的に「抗菌薬をあまり使わないように」という方向に、全力で「バイアスをかけてくる」内容になっているので、個人的には初期研修医などの初学者には優しくないなぁと感じました。特に最初のI-III章は、他の感染症の本でも聞いたことないような「自論」も多いように感じました。
抗菌薬をテキトーに使用して欲しくない気持ちはわかりますが、「こんな時には、必要です」という説明の仕方の方が読んでいて分かりやすいなぁと思いました。
2. ユキティのER画像TeachingFile
メジカルビュー社×医学書レビュー.comコラボ企画の2冊目は『ユキティのER画像TeachingFile』
救急外来で遭遇する疾患を中心とした画像診断のポイントを説明!
研修医だけでなく救急外来での画像診断に自信がなく不安な若手医師にオススメだそうです!
それでは書評をご覧ください
書名
ユキティのER画像TeachingFile
レビュワープロフィール
初期研修医1年目
各項目評価(5点満点)
- お求めやすさ(価格)
★★★★★ - よみやすさ
★★★★☆ - 使いやすさ
★★★★☆ - オリジナリティ・独創性
★★★★★ - 満足度
★★★★☆
どんな本?
「救急画像」に特化した画像診断の教科書です。「こんな画像所見を見たらヤバイ!」「こんな症状の患者がいたら次にどんな画像検査をオーダーすべきか」を手っ取り早く学べる一冊です。
おすすめの読者層
・初期研修で救急科を回る際の予習として/経験した症例の復習として
手っ取り早く救急画像に慣れるにはうってつけの本です。症例に沿って説明が進んでいくので、実際の受け持ち患者の症状や検査所見と画像を見比べながら学習を進められるかと思います。
・国試が終わって初期研修前暇な学生
いきなり臨床現場に出て画像を読むのは不安!という人にとっては、見逃してはいけない病変の読影テクニックを身に着ける手段として役立つかと思います。
良い点
・単なる画像の提示ではなく症例ベースで説明が進んでいくので、症状や既往歴、検査所見などと画像を見比べながら読み進めることできます。また、その症例がどんな転帰をたどったのか(帰宅、手術、死亡など)まで記されているため臨場感をもって読み進めることができます。
・画像の提示だけでなく、なぜそのような画像となるのか原理まで分かりやすく説明してあるので、画像の丸暗記ではなく理屈に基づいて覚えることができるかと思います。
・高エネルギー外傷による骨盤骨折や肺挫傷・血気胸など、他の参考書ではなかなかまとまって学ぶ機会のない画像に関しても詳しく掲載されており、さすが救急画像に特化しているだけあるなと感じました。一度でも画像を見たことがあれば、実際に外傷患者が搬送されてきても焦ることなく読影できるかと思います。
悪い点
略語の解説が各章の空きスペースに掲載されているため、わからない略語があるとその都度解説ページを探さなくてはならないのが少々面倒に感じられました。略語は章の最終ページや巻末などにまとめて掲載されている方が読みやすいかと思います。
レビュワープロフィール
医師18年目
専門:呼吸器内科、感染症科、アレルギー科
各項目評価(5点満点)
- お求めやすさ(価格)
★★★★☆ - よみやすさ
★★★★★ - 使いやすさ
★★★★★ - オリジナリティ・独創性
★★★★★ - 満足度
★★★★★
どんな本?
第Ⅰ章では画像診断を行うにあたり必須であるCTとMRIの基礎原理、第Ⅱ章では見逃すべきでない疾患を見つけるポイントが記載されています。第Ⅲ章では緊急性が重要な外傷とショックに関する画像診断のポイントが説明されています。
総じて主に救急外来で遭遇する疾患を中心とした画像診断のポイントを説明していくれています。
おすすめの読者層
初期研修医、後期研修医をはじめ、内科医、外科医、脳神経外科医、産婦人科医、泌尿器科医や救急疾患に携わる医師のニーズにフィットしていると思います。
良い点
・CT/MRIの読影を行うにあたり、必要最低限の基礎を図や画像も含めて掲載されており、とても分かりやすい
・読影のポイントのみの記載だけではなく、実際に症例を提示され、それに対する臨床所見や他科医の説明を交えている点が分かりやすい
・英語の略語の説明まで記載され、丁寧で理解しやすい
総じて、CT/MRIの基本を学びたい研修医をはじめとして、内科医、外科医、脳神経外科医、産婦人科医、泌尿器科医や救急疾患に携わる医師にも分かりやすい参考書だと思います。
悪い点
全体的にとても分かりやすい参考書ですが、強いて言えば(私が呼吸器科医ですので肺のCT読影部位で気になった部分を述べさせて頂きます)p135の「小葉間隔壁の肥厚をきたす疾患はたくさんある」の部分で、小葉間隔壁をきたす疾患名を羅列して頂けたら尚更分かりやすいかなぁ~と思いました。
レビュワープロフィール
踊る救急医先生
専門:救急科
Twitter:@houseloveryuki
Webサイト:https://lit.link/dancingdoctor
各項目評価(5点満点)
- お求めやすさ(価格)
★★★★★ - よみやすさ
★★★★★ - 使いやすさ
★★★★☆ - オリジナリティ・独創性
★★★☆☆ - 満足度
★★★★★
どんな本?
救急外来で判断が微妙な画像診断に迷う若手医師を、正しい診断と治療方針へ導いてくれる一冊。
救急外来で出会うコモンな疾患の画像検査において抑えるべきポイントが網羅されており、臨床所見と合わせて画像所見から論理的に判断する思考プロセスを身につけることができる。
おすすめの読者層
・救急外来での画像診断の知識を1から身につけたい初期研修医
・1人当直を始めたばかりで、救急外来での画像診断に自信のなく不安な若手医師
・研修医や専門外の医師がどのような思考回路で画像の読影に悩んでいるのかを把握し、明日からの指導に役立てたい各科の中堅医師
良い点
・CTやMRIの画像読影をする上で避けては通れない基本的な原理や解剖について初学者にもわかりやすい言葉でまとめられているので、画像検査に苦手意識がある方でも読み進めやすい。
・実際に救急外来で遭遇するような症例が数多く盛り込まれており、単に客観的で正確な読影所見を学べるだけではなく、病歴やバイタルサインと合わせて判断する臨床現場に即した能力を身につけることができるのが最大の魅力である。
・それぞれの疾患に特徴的な読影所見の単純暗記ではなく、たとえ稀な疾患であっても体系的かつ論理的に読影を進められるような普遍的なロジックを身につけることができる。
悪い点
各疾患の現病歴と画像の解説が近接しており、実際に画像の読影で悩みながら読み進めるわけではないため、意識しないと問題集の答えを読み合わせるような受動的な学びとなってしまいかねない。
ページ数が許容するのであれば、症例提示と画像解説を別ページで準備したほうがより能動的な学びにつながるのかもしれない。
レビュワープロフィール
次郎作(医師5年目)
専門:小児科
各項目評価(5点満点)
- お求めやすさ(価格)
★★★★☆ - よみやすさ
★★★★★ - 使いやすさ
★★★★☆ - オリジナリティ・独創性
★★★★☆ - 満足度
★★★★★
どんな本?
放射線読影専門医の筆者が総合病院内で行っている勉強会の資料をまとめた一冊。特に、救急外来や救急車対応で画像検査が必要となる「急性腹症」や「胸部CT」、「頭部のCT/MRI」の読み方など、初期研修医が知っておくべき知識が凝集されています。
おすすめの読者層
救急外来や救急車対応が必要だが、画像検査の読影に自信がない初期研修医など
良い点
・とても臨床経過を大事にしている先生のようで、症例提示も臨場感があってとても分かりやすいです。
・「泌尿器科Drに聞いた!」などと、他科の先生のコメントも入れてくれているのがさらに勉強になります。
・また、同じ疾患であっても多数の画像を紹介してくれるので、同じ疾患でも画像所見の軽症~重症があることを勉強できます。
悪い点
初期研修医向けの救急で遭遇する画像の参考書として、とても満足のいく本でした。
強いてあげると「これは臨床的にかなり稀だな」っていうものもチョコチョコ入っていたので、まっさらな状態の初期研修医は少し混乱してしまうかもなと思いました。疾患の頻度を具体的に示してもよいかもしれません。
3. シチュエーションで学ぶ 輸液レッスン
メジカルビュー社×医学書レビュー.comコラボ企画の3冊目は『シチュエーションで学ぶ 輸液レッスン』
初学者向けに輸液のことから電解質異常〜酸塩基平衡のことまで書かれてます!
初期研修の始まりにいかがでしょうか?
それでは書評をご覧ください
書名
シチュエーションで学ぶ 輸液レッスン 第2版
レビュワープロフィール
次郎作(医師5年目)
専門:小児科
各項目評価(5点満点)
- お求めやすさ(価格)
★★★★☆ - よみやすさ
★★★★★ - 使いやすさ
★★★★★ - オリジナリティ・独創性
★★★★☆ - 満足度
★★★★★
どんな本?
「輸液レッスン」と題しながら、輸液のことから電解質異常〜酸塩基平衡のことまで初学者に向けて書かれたとても分かりやすい一冊
おすすめの読者層
初期研修の始まりや、高Na血症や低K血症などの電解質異常の勉強をしようと思った時に、最初に読むと良いと思います。
良い点
輸液を考える上で必要なナトリウムや塩(NaCl)に関する考え方や、水分の分布などの知識もわかりやすく最初に解説してくれてとても分かりやすかったです。
輸液だけの範囲を超えて、「高Na血症」「低Na血症」「高K血症」「低K血症」「アシドーシス」「アルカローシス」など初期研修医が避けては通れない、電解質異常や酸塩基平衡について分かりやすく解説してくれているので、そのプロブレムに直面するたびに読み返すと良いと思います。
輸液・電解質異常・酸塩基平衡の勉強の最初の一冊にしても良いと思います。
悪い点
題名の「輸液レッスン」より、途中から電解質異常や酸塩基平衡の治療がメインになっているので、とても勉強にはなるんですが、題名をみて購入する人の求めている内容とズレてしまう可能性はあるなと感じました。
4. 臨床研修 わたしたちのなんでも手帖
メジカルビュー社×医学書レビュー.comコラボ企画の4冊目は『臨床研修 わたしたちのなんでも手帖』
国試合格直後のまさにピカピカの研修医にオススメの1冊だそうです!
それでは書評をご覧ください
書名
臨床研修 わたしたちのなんでも手帖 第3版
レビュワープロフィール
医師18年目
専門:呼吸器内科、感染症科、アレルギー科
各項目評価(5点満点)
- お求めやすさ(価格)
★★★★★ - よみやすさ
★★★★★ - 使いやすさ
★★★★★ - オリジナリティ・独創性
★★★★★ - 満足度
★★★★★
どんな本?
初期研修医の仕事の流れ、薬の基本的な知識、初期研修医に必要な手技の仕方とコツ、また救急外来・当直での対応や遭遇する主な症状/疾患について等々、イラストや表を交えながら記載されており、この1冊で研修医としてやすべきこと、理解すべきことがほとんど理解できる書籍だと思います。
おすすめの読者層
初期研修医に最も適していると思いますが、臨床研修を行っている医学生、また初期研修医を終えた後期研修医も初心に返れる、知識の再確認を行うことができる書籍だと思います。
良い点
・Chapter3[初期研修医に必要な手技のコツ]が、カラーで図示され、分かりやすい言葉で説明されているので臨床に即して理解しやすい
・Chapter1の前に記載されている「わたしたちがわからなかった臨床で使われる用語・略語」がとても参考になる(普段、上司が使用している略語についていけない研修医は沢山いると思うので)
・Chapter1[病棟の仕事]で、酸素投与とFiO2の関係が、救急の場面や急性/慢性呼吸不全で酸素療法が必要な場面に遭遇することが多いので、分かりやすくとても参考になると 思う
総じて、国家試験合格し初の臨床の現場に立つホヤホヤの初期研修医をはじめ、医師歴1~5年目くらいまでの研修医にもとても分かりやすい参考書だと思います。
悪い点
全体的にとても分かりやすい参考書ですが、強いて言えば、Charpter2[くすりのこと]で、商品名だけではなく、一般名の記載もされたほうがよろしいかと思います。(現在は後発品の使用頻度が多くなっており、一般名も知っておくべきだと思います)
また、p38人工呼吸器の設定で、なぜPEEPをFiO2と相関させて設定すべきなのか等の説明をもう少し記載されたほうが分かりやすいかな~と思いました。
レビュワープロフィール
初期研修医1年目
各項目評価(5点満点)
- お求めやすさ(価格)
★★★★☆ - よみやすさ
★★★★★ - 使いやすさ
★★★★☆ - オリジナリティ・独創性
★★★☆☆ - 満足度
★★★★☆
どんな本?
国試の勉強で疾患のことは一通り頭に入ったけれど実際研修医になって病棟に出るとオーダーの出し方や慣れない手技で右往左往する人が多いはずです。
この本をお守りとして白衣のポケットに入れておけば4月いきなり病棟に出ても焦ることなく業務がこなせる、そんな一冊です。
おすすめの読者層
・特に1年目の初期研修医や国試が終わってこれから初期研修が始まる予定のM6
指示簿に何を書けばいいのか、ルートや血培の取り方やコツ、食事や点滴は?など、病棟ではいちいち教えてもらえないことが一通りまとまっています。
・ポリクリ中の学生
ポリクリ中の手技見学では、今どんな操作を行っているのか、今使っている器具は何か、など十分な説明なしになんとなく見学させられている学生も多いはずです。手技のおおまかな流れをこの本で確認しておけば、見学時間も有意義に過ごせるしちょっとした介助もできると思います。
良い点
・各項目が見開き2ページ以内にまとめられているので、病棟で分からないことがあったときにぱっと辞書代わりに使えると思います。特に、巻末にメジャーな疾患の診断基準やスコアリング表が掲載されているのは便利です。
・術後の食上げ、創傷被覆材の使い分けなど、上級医は当たり前に行っているけれど研修医にとってはまだ慣れず、しかもなんとなく上の先生に聞きづらいことも簡潔にまとまっているのが研修医にとっては助かります。
・妊婦、授乳中に使える薬、小児に処方する頻度の高い薬がまとめられているのが便利だと思いました。
悪い点
病棟で分からないことがあったときのお助け本としては役立ちますが、通読して一から疾患を学ぶには向かない本だと感じました。また、手技の説明では、ページよってはイラストが少なくイメージしづらいと感じる箇所もありました。
レビュワープロフィール
医師5年目
専門:外科
各項目評価(5点満点)
- お求めやすさ(価格)
★★★★★ - よみやすさ
★★★★★ - 使いやすさ
★★★★★ - オリジナリティ・独創性
★★★☆☆ - 満足度
★★★★☆
どんな本?
初期研修医が各ローテーション先で指導医からの指示を遂行するにあたり聞きたくてもなかなか聞きづらいことが網羅的に記されている本。
おすすめの読者層
初期研修医および実習中の学生。
良い点
・ポケットサイズ、かつ軽量のためふとしたときに使用しやすい。一から学習するために読むというよりは実務をこなしながらふとした時に参照する使い方がbetterな一冊。
・初期研修にあたっては実務をこなすにあたり十分実用性がある印象。ただ広く浅くの印象が否めないため自分の専攻分野に対してはさらにふみこんだ学習を要する。さまざまなスコアや簡潔にまとまったガイドライン、診断基準などが巻末にまとまっており、専門研修の際も自身の専門分野外に関しては十分参考になりそうな一冊。
悪い点
・良くも悪くも初期研修に必要な知識がまとまった一冊である印象、自身の専門分野が決まったらその分野に関してはもう一歩二歩踏み込んだ学習は必要である。
・病棟業務に必要なイロハがせっかく広く浅くよくまとまっている一冊であるため、さらに欲を言えば皮膚科領域や整形領域といった専門分野外でもよく看護師から対応を求められる領域に関して触れられていてもよかったかもしれない。
レビュワープロフィール
次郎作(医師5年目)
専門:小児科
各項目評価(5点満点)
- お求めやすさ(価格)
★★★☆☆ - よみやすさ
★★★★☆ - 使いやすさ
★★★★★ - オリジナリティ・独創性
★★★★☆ - 満足度
★★★★☆
どんな本?
「うわ〜これ初期研修医1年目の最初の数ヶ月で参考にしておいたらよかったな〜」と、素直に思える一冊。
2020/10の最新の医学の情報の中から「初期研修医が知っておくべきこと」「初期研修医が調べたくなること」などを説明してくれています。
おすすめの読者層
・実践的な内容を勉強しながら病院実習を回りたい学生
・病院に出るのが不安で何か事前に読んでおきたい、国試後・就職直前
・医者にはなったけれど、右も左も分からない初期研修医1年目の最初の数ヶ月
良い点
・入院食の決め方(カロリー計算や、塩分制限食・腎不全食など、最初わからなかった!)
・酸素流量とFiO2の関係
・内服薬の表記の仕方(1錠×3、3錠 3×、3錠 分3、などの意味が分からなかった)
・投与ミスが起こりやすい薬剤(メトトレキサートなど実際に訴訟になったものも最初は知らなかった)
・ステロイドの知識、投与前の検査項目
・DIC診断基準、NIHSS(脳梗塞のスケール)、長谷川式、などサッと調べたい内容
総じて、初期研修の最初の数ヶ月でポケットに入れて「医師の常識」を身につけるには良い参考書だと思いました。
悪い点
Chapter4の当直の部分は、「頭痛」「めまい」など症候学に関しての記載がありますが、流石にこの部分は情報量が少なすぎるので、別の鑑別疾患系の参考書を読んだ方が良いなと思いました。
5. 外科処置・小手技の技&Tips
メジカルビュー社×医学書レビュー.comコラボ企画の5冊目は『外科処置・小手技の技&Tips』
イラストをふんだんに使いながら、手技の良い例・悪い例を比べてみることが出来るのがgood!患者さん想いで、美しい縫合を身に着けたい人におすすめの1冊とのこと!
それでは書評をご覧ください
書名
外科処置・小手技の技&Tips 第2版
レビュワープロフィール
医師5年目
専門:外科
各項目評価(5点満点)
- お求めやすさ(価格)
★★★★☆ - よみやすさ
★★★★★ - 使いやすさ
★★★☆☆ - オリジナリティ・独創性
★★★★★ - 満足度
★★★★☆
どんな本?
外科系全般に要求される創部処理方法について詳しく、しかしとても分かりやすくまとまった一冊。また形成外科のDrたちの美しい創傷処置法をリアリティをもって学べる一冊。
おすすめの読者層
外科系に興味を持つ研修医、また外科レジデントにとっても体表の創部処理法を丁寧に学ぶ機会がなかなかないため知識を補填するのに有用な一冊。
良い点
・図がふんだんに使用されていてとてもわかりやすい。写真も多くて助かります。
・一般的な創処置のtipsのみならず、一般外科当直・救急外来に必要な分野が十分網羅されており、必要時に参考にするのもよい。
・よくない創処置をするとどうなるのかも示されている本は他になかなかないのではないだろうか。
悪い点
とても良い本であまり悪い点はありませんが、わかりやすさ重視のためか図がやや多すぎる印象があり逆にわかりづらくなってしまっている面もあります。
要となる部分の図は大事かとおもいますが余計な図も多い印象があります。
レビュワープロフィール
踊る救急医先生
専門:救急科
Twitter: @houseloveryuki
Webサイト: https://lit.link/dancingdoctor
各項目評価(5点満点)
- お求めやすさ(価格)
★★★☆☆ - よみやすさ
★★★★★ - 使いやすさ
★★★★☆ - オリジナリティ・独創性
★★★★☆ - 満足度
★★★★★
どんな本?
普段のナートや局所麻酔、抜糸などの外科処置のルーチンを見直すきっかけとなる一冊。
ひと目でわかりやすい図やシェーマに加え、具体的かつ丁寧な解説が付きであり初心者も実践しやすいコツが盛り込まれている。外科処置に苦手意識を持った医師であっても、明日からの処置が楽しみになること間違いなし。
おすすめの読者層
・プライマリーケアの現場で普段から創部縫合をする機会のある研修医や若手医師
・普段の定期手術においてより早く、要領よく、美しい閉創の技術を身につけたい外科系の若手医師
・研修医や若手医師の外科処置について指導する機会の多い指導レベルの中堅医師
良い点
・当書で特筆すべき内容としては、外科処置の良い例と悪い例を対比して解説していること。初心者が陥りやすいミスとその後の経過が非常にわかりやすい。経過フォローの期間も半年以上と長期を想定しており、普段プライマリーケアにおいて縫合から抜糸までしかフォローしていない医師にとってはドキッとする内容も多いのではないだろうか。
・理想的な外科処置についての解説はもちろん、時間をかけられない現場の本音と実際の妥当な対応についても言及されている。この手の参考書の読了後にありがちな、あまりに理想を追求しすぎるがために逆に日々の処置に長時間かかってしまう事は避けられるだろう。
・患者さんやコメディカルの方々の率直な気持ちや訴えにまでここまで言及されている医学書はあまりなく、新鮮味を感じた。患者さんファーストな治療を心がける著者の熱い想いをひしひしと感じる一冊であった。
悪い点
・救急外来のシチュエーションで実際に縫合処置を開始する直前に、どのページを読めば復習できるかが目次を一見するだけではわかりにくい印象がある。
読者各々が本書を入念に通読し、どこに何の内容が解説されているか把握し、付箋などでわかりやすくマークしておくことを推奨する。
・実際の外傷診療で経験する、挫創の閉創対応の可否についての判断については言及が乏しいように感じた。どの程度の汚染や大きさの挫創であれば閉創対応可能なのか、逆にどのような時に洗浄後に陰圧閉鎖及び持続洗浄をし、待機的に閉創するのかといった臨床判断は、他の医学書で学ぶ必要がありそう。
レビュワープロフィール
医師4年目
専門:救急科
各項目評価(5点満点)
- お求めやすさ(価格)
★★☆☆☆ - よみやすさ
★★★☆☆ - 使いやすさ
★★★★★ - オリジナリティ・独創性
★★★★★ - 満足度
★★★★☆
どんな本?
東京大学形成外科学分野の教授が、良い意味で「アカデミック」ではなく、「極めて臨床現場的な観点から」縫合や外傷処置について述べられた本。
著者の長年の経験から、「どのようにしたら患者の不満が最小限になるベストな処置が出来るか」「どのようにしたら、無駄のないスピーディな処置が可能か」ということが述べられていて、患者さんへの愛情を感じる1冊である。
おすすめの読者層
・医師3年目となり、1人で診療する機会が増える外科系後期研修医
・漠然と上級医の指導に従って処置をしていたが、「それってホントにベストなのかな?」と気になる初期研修医・後期研修医(ベストな処置でないことが少なくない)
良い点
・本書全体から感じられる「どこまでも患者思い」の内容がとても良い。特に「前腕の横瘢痕はリストカットを彷彿とさせる」ため避けることも考慮されるとの記載には、あまりの患者思いに驚かされた。
・縫合場所や患者の希望によってベストな縫合方法が異なることが学べる。画一的に1つの方法を妄信してしまいがちだが、そのような視点が導入されることは本書の大きな利点である。
・例えば「単結節縫合と連続縫合の適応の違い」など、正解が分からないまま慣習的に使い分けていた処置について、明確な意見が述べられている
・本書全体として、医師3年目から1人外科当直が始まった際の1つのバイブルとして非常に役立つと考えられる。
悪い点
・内容に申し分はないが、左ページで全てを図示しようとした結果、やや見づらい時がある
・左ページの図と右のPOINTで同じ内容を記載していることがあるので、時間の無い人は左ページの図のみをザーッと読む使い方も出来そう
・Ⅱ章の手術はやや形成外科的な内容が多いため、一般外科の先生にとってはやや専門的過ぎるかもしれない
レビュワープロフィール
次郎作(医師5年目)
専門:小児科
各項目評価(5点満点)
- お求めやすさ(価格)
★★★☆☆ - よみやすさ
★★★★★ - 使いやすさ
★★★★☆ - オリジナリティ・独創性
★★★★★ - 満足度
★★★★☆
どんな本?
形成外科の先生が、縫合などの処置を出来る限りキレイに仕上げるためのTipsを集めた本。
おすすめの読者層
2版の改訂に際して、専門性が高い部分を削ってより内容をレジデント向けに変更しており、外科処置(特に縫合)を行う全ての若手医師に有用な一冊となる。
良い点
絵が盛りだくさんであり、ダメな例も同時に載せてくれているので、とても分かりやすく次回の縫合時から参考に出来るようになっている。
小児科外来でも、時に顔面の縫合や熱傷の処置を行うことがあるが、その際にも意識することが多く、とても参考になった。
さらに、外科系の科に進む医師にとっては一度読んでおくだけで、縫合の基本的な部分が押さえられるため、良いように思える。
悪い点
小児科的には、縫合の機会より熱傷の対応も多いので、熱傷の処置の工夫などあればより詳しく書いてもらえると嬉しい。
今回のキャンペーンで紹介する書籍は以上となりますが、今回紹介した以外にもメジカルビュー社様の医学書では、
などの心不全シリーズや、総合評価★8読み返し度★5の
など10冊以上のレビューがあるので、そちらもぜひ参考にしてみてください!
それでは最後に、新初期研修医の先生方のご活躍をお祈りするとともに、いずれ転生した研修医(?)として次世代の初期研修医に向けてレビューを書いてくださる日を楽しみに待っています!!
メジカルビュー社様におかれましても、この度はこのようなコラボ企画でご一緒させていただき、誠にありがとうございました!!