タイトル
“Using vital signs to diagnose impaired consciousness: cross sectional observational study.”
Ikeda, Masayuki, et al Bmj 325.7368 (2002): 800.
原文はこちら
※オープンジャーナルであり、図表を引用しています
論文を一言でまとめると
日本の単施設の救急外来に受診する意識障害の患者において、
収縮期血圧を用いると、ROC曲線の AUC 0.9と高い識別率で頭蓋内に意識障害の原因があるか否かを識別することが可能であった。
Methods
[場所/施設]
日本の旭総合病院の救急外来
[Patients]
2000年に、救急外来を受診した15歳以上で受診時のGCSが15点未満の患者
(※頭部外傷を除く)
[Exposure]
意識障害の原因が頭蓋内病変である
[Comparison]
意識障害の原因が頭蓋内の病変によらない
[Outcome]
受診時の血圧と、意識障害の原因が頭蓋内の病変に因るものか否か、の関係性
[デザイン]
単施設における横断研究
結果まとめ
・2000年の間に、15293人が旭総合病院を受診して、そのうち529名が研究対象となった。年齢の平均は65歳(SD 21歳)であり、年齢分布は以下の通り。
(原著からの引用)
・意識障害の原因が、頭蓋内病変である症例は312例、頭蓋内病変ではない症例が217例であった。
・収縮期血圧の平均値は、頭蓋内病変が意識障害の原因であった群で168mmHg (SD 38 mmHg)、頭蓋内病変が意識障害の原因でなかった群で111mgHg (SD 27mmHg)と、統計学的に有意に差があった(P< .0001)。
Figure1. 意識障害の原因別の収縮期血圧の分布
(原著からの引用)
Figure3. 収縮期血圧・拡張期血圧・心拍数別の感度/特異度を用いたROC曲線
(原著からの引用)
・感度/特異度を用いたROC曲線のAUC(area under curve)は、収縮期血圧で0.90 (SE 0.01)、拡張期血圧の0.82 (0.02)、心拍数で0.63 (SE0.03)であり、収縮期血圧によるAUCは拡張期血圧によるAUCと比べて有意に大きかった。
Table3. ROC曲線のための階層別尤度比
(原著からの引用)
・以上の結果から筆者らは、意識障害のある救急外来受診患者に対して、バイタルサイン特に収縮期血圧を用いることで頭蓋内に原因があるかどうかを識別することができ、臨床的にも経済的にも有用である可能性がある、と述べた。
[Limitation]
・単施設での研究であり、研究対象者に偏りがある(高齢者が多いなど)
[次郎作の感想]
・東大の授業の課題論文だったのですが、読んでとても勉強になった論文でした。
・元々、初期研修医向けの本にも「血圧の高い意識障害は脳卒中を疑う」などとクリニカルパール(臨床的な格言)は書いてあるので知っていましたが、それを丁寧にデータで示した論文になっていて、臨床に直結するいい研究だなと思いました。
・臨床的な課題に基づいた適切なデザインの研究であれば、横断研究で単施設の研究でもBMJのようなジャーナルに掲載される論文になるのだなぁととても感心しました。